この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第11巻収録。同心の小柳安五郎が同僚の同心・黒沢勝之助と、苅野の九平一味の女賊・網虫のお吉との密会を目撃する。なにかと黒い噂がある黒沢の驚くべき秘密とは?平蔵の御役返上騒ぎにまで発展した大事件。
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忠吾のおのろけ
新婚の同心、木村忠吾は口を開けばおのろけばかりだ。同僚にもおのろけ節は止まらず、呆れた同僚たちから反感を買うほどにのろけまくる。むしろ同僚を怒らせるまでのろける事を楽しんでいるのかもしれないな。鬼平に対しても態度を変えないあたりが、いかにも忠吾らしいぞ。
新婚の浮かれ気分で仕事に身の入らない忠吾に対して、多くの同僚が反感を抱く中、ただ一人ドンと構えていたのが黒沢勝之助であった。
ところが同じ同心の小柳が、黒沢のとんでもない非行を目撃してしまう事からストーリーが展開して行くぞ。同心にあるまじき黒沢の非行をとことんまで描いた作品になっている。
日本らしい仕事の在り方
忠吾が見廻りから戻り、新婚の妻と会いたさ一心だったのだろうか、帰宅を申し出るも筆頭同心の酒井は帰宅を渋るという描写がある。「まだ陽が高いから、他の者はまだ見廻りをしているから」という理由から忠吾が帰宅する事を良しとしない反応ではあったが、非常に日本らしい労働環境と感じてしまったのだ。
まぁ職業柄もあるのは重々承知なのだが、仕事が完遂したならば他者の仕事の進捗は無関係というのがグローバルな考え方かもしれないぞ。仮に忠吾の勤務が終了時刻であったとするならば、同僚がまだ仕事をしているから帰れない。という事が引き起こす弊害の方が大きいといった考え方だ。
もちろん忠吾の件は古くから日本で浸透している考え方ではあるのだが、これから世界の中での一国としての日本という立ち位置で考えた場合には、脱却せねばならない感覚かもしれないと感じたな。
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弱みに付け込んでの脅しは許すまじ
網虫のお吉の犯罪歴を強請りの種に、体の関係だけではなく金銭までもむしり続けるとは、人間としてどうあっても許されざる行為だろう。ましてや公権力を持った人間がそのような行為をしているとなれば、これはもう救いようが無い。
堅気になろうと努力をする女性に対して、容赦ない強請りを掛けてしまう人間の残酷さを克明に描いていると思う。黒沢の強請りを暴くべく出張った鬼平と小柳の心中も複雑だったろう。
むしろ鬼平に一刀両断の無礼討に処されても文句は言えないだろうな。本作を読んで気分を害する人もいるだろう。しかし黒沢の非行により、鬼平はじめ火盗改メの責務という物を痛感出来るかもしれないぞ。
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滝田 莞爾
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