この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第16巻収録。第14巻『猫じゃらしの女』に登場した盗賊・伊佐蔵の実弟・新五郎が、髪結いの五郎蔵を引き込み役に使い、火盗改方の役宅に攻め込む。迎え撃つのは、この日のために一刀流の奥義を授かった辰蔵以下、精鋭同心。平蔵の妻・久栄がなぎなたを持って賊と戦うというレアなシーンも。
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外廻りの髪結い
火盗改メの役宅に出入りする髪結いに新しい担当者、名前を奇しくも五郎蔵といった。密偵、大滝の五郎蔵と同じ名前である事から本作のタイトルが命名されているぞ。
江戸時代の髪結いには、仕事をする場所が三つあったとされる。河原などに板を敷いた簡易的な髪結い、店を構えた髪結い、訪問型の髪結いだ。
五郎蔵は腕前が評価されて、大店や武家屋敷にまで出入りが許された訪問型の髪結いと言えるだろう。腕前に文句は無いのだが、女房との間に何らかのトラブルがあったと見る鬼平。いったい五郎蔵の女房の身には何があったのだろうか。
髪結いから床屋へ
髪結いの五郎蔵は、現代で言うところの床屋さんという職業だ。実際には商家や武家屋敷を訪問しているので、床屋という呼称ではなく髪結いと呼ばれているな。
江戸時代には男性相手でも女性相手でも、髪を整える職業は髪結いと呼ばれていたそうな。髪結いをする場所や仕事のスタイルによっては、簡易的な板を敷いた床や、店舗型の床を構えた髪結いも多かったそうで。
他にも床を構えていた職業はあったものの、主に男性相手の髪結い職人が“髪結い床”で多く仕事をしていたぞ。そこから転じて髪結い職人が床屋と言われるようになったのだ。
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鬼平の寛大で粋な裁き
五郎蔵の女房は作品に登場はしないものの、描写から推測するに盗賊の一味であった事が推測できる。当の五郎蔵はその事を知る由もなかったものの、半ば脅されて引き込みをせざるを得なかったのだ。
盗賊の引き込みを担った以上、厳罰をも覚悟せねばならなかった訳だが、その件に関する鬼平の裁きが素晴らしい。ただ罰則を与えるだけではなく、罪人の尊厳を守り、更に更生をも図ろうとは。
この裁きを見ただけでも、いかに鬼平が人の心を大切にしたか、そして粋だったかが分かると思うぞ。現代においても理想の上司、理想の管理職として期待されそうだな。
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滝田 莞爾

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