この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第14巻収録。粂八の昔の盗賊仲間・伊三次が、粂八に鍵のろう型を送ってきた。伊三次が通う提灯店の女が、ある客から預かったものだという。盗賊団が盗めを計画していると直感した粂八と平蔵は、さっそく提灯店をマークするが……。密偵・伊三次が初登場するエピソード。
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非常にキャラクラーが強い、伊三次
盗賊時代の粂八と顔見知りという事で登場した伊三次。本格の性根を持った正義感が強く、そして色男といったキャラクターだろう。盗賊といえども、その正しき心は密偵としての働きに役立つと考えるのが鬼平だ。
粂八や五郎蔵といった盗賊たちも、鬼平の信用を得て密偵として働いている。伊三次にも複雑な過去があっただろう。しかし鬼平の下で働きたいという気持ちもある訳だ。果たして鬼平に対して伊三次の純粋な気持ちは通じるのだろうか。
伊三次の過去
捕縛の手を免れた盗賊頭、強矢(すねや)の伊佐蔵は伊三次と過去に因縁のある男だった。伊佐蔵にとって伊三次は女仇でもあった訳で、今回の捕縛に関しても怒り心頭だろう。本作にて初登場の伊三次は、別ストーリーに展開する事もなくあえなく殉職をしてしまう。
しかし池波正太郎の原作ではこの伊三次、非常に人気の高いキャラクターで、死亡時には編集部に抗議が来たという逸話まであるのだ。一話完結として伊三次のストーリーが結末を迎えてしまった事は少し残念ではある。しかし、だからこそ伊三次と鬼平との心理描写が上手く描けたのではないだろうか。
伊三次の死後の話となるが、『鬼火』には伊三次が馴染みだった“みよしや”が再登場するぞ。そこで伊三次という存在がいたという事に思いを馳せて今作を読み返してみるのも、楽しみ方のひとつかもしれないな。
上野広小路を舞台に
広小路は火災の延焼を防ぐ目的で江戸時代に作られた大きな道路だ。江戸三大広小路といえば、上野広小路、両国広小路、浅草広小路で有名だな。本作の舞台になっている提灯店“みよしや”は上野広小路にある見世だったか。
今の地図でいうと、中央通りの松坂屋から上野公園入口あたりまでが上野広小路になるだろう。駅で言えば上野御徒町駅から京成上野駅が近いだろうな。少し横道に逸れたら不忍池や池之端といった、鬼平犯科帳にたびたび登場する地域だ。上野公園まで足を伸ばしても良い散歩コースに出来るのではないだろうか。
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滝田 莞爾
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