この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第35巻収録。同心の沢田小平次が平蔵に相談を持ちかけてきた。幼なじみで大店の若旦那でもある宗兵衛が、悪党どもから恐喝されているという。その悪党と、先月、仏具屋を襲った盗賊とに共通点があったことから、平蔵が一肌脱ぐ。久々に吼える、沢田の小野派一刀流・免許皆伝の腕前もみどころ。
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小野派一刀流の免許皆伝
火盗改メが多数抱える同心、与力の中でも、その剣の腕は随一と評される沢田小平治が本作の主役だぞ。剣の実力は鬼平を以てして自らよりも上かもしれないと言わしめるほどだ。
沢田が中心のエピソードとしては、『剣客』『冬牡丹』などがある。剣捌きこそが沢田の見せ場と言えるので、沢田ファンの方はもちろん、アクションシーンが好きな方にも楽しめる作品だろう。
余暇を利用して沢田が訪ねたのは幼馴染の宋兵衛。じゃんか(あばた)面が印象的な小柄な青年といったところだろうか、絵心があって好印象な感じだ。沢田と宋兵衛、二人の幼少時代を描く場面は素敵な友情が見えて、きっと心が温かくなるシーンだろう。
じゃんかと疱瘡
日本でも古くから天然痘という感染症による脅威が続いていた。江戸時代にも天然痘は流行していて、疱瘡と呼ばれていたのだ。特に幼少時に罹患する人が多かったようで、記録によると疱瘡に罹った子供の半数が命を落としたという。助かったとしても体表に出来た水疱が瘢痕として残ってしまう。
その瘢痕の事をじゃんこ(じゃんか)と呼ぶのだが、生涯に渡って残るために、やはりいじめの対象となるなど大変な思いを余儀なくされてきたようだ。疱瘡は疱瘡神によって起こされる災いと信じられていて、疱瘡神が赤色と動物を嫌う事から、それに関わる文化や伝統は今も色濃く残っている。
例えば福島県のお土産で有名な“赤べこ”は、疱瘡神除けのお守りとして扱われてきた歴史があるのだ。現在では絶滅したとされる天然痘だが、感染症は時代によって差別の対象ともなってきた。そうした差別も病気と同時になくなる事を願っているぞ。
あばたもえくぼ
盗賊たちに強請りを掛けられている宋兵衛に救いの手を差し伸べたのは沢田だった。やはり幼馴染としての友情は強いものだな。じゃんこ面で女性とも上手く付き合う事の出来なかった宋兵衛、強請られた原因も女性だったようだ。盗賊たちと沢田、鬼平のアクションシーンも見ものだ。
さて、じゃんこ面だからといって心の内面に違いがある訳ではない。宋兵衛の心の清さを見抜いて、一緒になってくれる女性と出会えたのは素晴らしい事だ。まさに宋兵衛のじゃんこも、“あばたもえくぼ”として見てもらえた訳だな。人を好きになればその人の短所を含めて好きになる。それは時代が変わっても同じことなのだ。
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滝田 莞爾
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