この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第12巻収録。密偵の彦十が盗賊”狢の豊三”一味の手がかりを持ってきた。どうやら一味は仏具店・和泉屋を狙っているらしい。しかしこの和泉屋の正体は、その昔、関西で名を轟かせた大盗賊・堂ヶ原の忠兵衛だった!盗賊が別の盗賊の盗み金を狙うというレアなエピソード。
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彦十をからかう鬼平
彦十が昔馴染みを訪問した際に、品川宿にて稲荷の金太郎なる盗賊を見かけて後を尾けたというエピソードから始まる本作だ。鬼平は品川宿を訪れた彦十に対して、白粉の匂いが恋しいのか?とからかうのだ。年寄りを虚仮にしなさんな、と彦十は言うのだが、品川宿は白粉の匂いを漂わせる女性が多いという事。つまり岡場所として非常に有名であったという背景があるのだ。
こうした小噺も微笑ましいが、稲荷の金太郎が戻った大黒やという茶屋が盗賊宿の可能性があると報告を受けた鬼平はさっそく見張りを立てる事になる。大黒やの向かいに位置する仏具を扱う和泉屋の二階を貸してもらえぬかと問う佐嶋らに対し、快く了承をする和泉屋ではあったが、どこか緊張をしているようにも見えるな。果たして盗賊たちが狙うものは一体何なのだろうか。そして和泉屋の隠し事も気になる、そんなストーリーが展開されて行くぞ。
みんな大好き、品川宿
日本橋を起点として、東海道を西に向かう際の最初の宿場町として認められた場所が品川宿だ。彦十が顔を見知った盗賊を見かけたのも品川宿だな。品川宿といっても北本宿、南本宿、歩行(かち)新宿の三つの宿から成り立っていたぞ。本来、宿は伝馬の手配もするのだが歩行新宿では歩行人足のみの手配をしたことから、伝馬は扱わずに歩行のみを扱う宿という意味で歩行新宿の名が付いたとされるのだ。
1843年の記録によると、平旅籠といって普通に泊まる宿が1561軒のうち19軒に対して、食売旅籠が92軒、水茶屋が64軒あったそうな。品川宿には飯盛女500人の配備が公認されていたのだが、実際には1300人を超える飯盛女がいたようだ。さて、ここで出てきた飯盛女とは何だろうか。平たく言ってしまえば売春をする女性の事なのだが、その建前としてはこうだ。旅籠に泊まった客をねぎらって飯をよそっているうちに恋愛感情が芽生えて夜を共にする事に。現代でもどこかで聞いた事のある話だが、江戸時代で既に一般的だったとは驚きだ。
京への手土産
京都町奉行所の与力、浦部彦太郎が役宅の鬼平を訪ねる。浦部といえば、鬼平が京都で大立ち回りをした『兇剣』で行動を共にした与力だ。木村忠吾を気に入った浦部は妹を忠吾の嫁にと考えていたのだが、早世をした妹の事を想っていた忠吾が結婚をするにあたって、お祝いの品を持参していた。
忠吾に直接お祝いの品を渡す事を期待していたのだが、当の忠吾は飯盛女との一戦で朝寝坊という大失態を犯してしまうのだ。新婚ながらに情けない忠吾のおとぼけエピソードではあったが、浦部が鬼平を訪ねていたが故に、どんでん返しとも言える結末が訪れるのだから、忠吾の女癖もたまには役に立つ、のだろうか。京都町奉行所の役人だからこそ気づく事が出来た京での盗賊稼業。思わぬ大手柄となった浦部の活躍も見もののストーリーだ。
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滝田 莞爾
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