この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第26巻収録。僧侶の宗円が、平蔵を通じて京極備前守に届けてほしい”ある物”があると手紙を送ってきた。しかし宗円は、信州から江戸へ向かう最中に命をおとす。宗円から”ある物”を預かった盗賊・明神の次郎吉は、約束どおり平蔵のもとに届けるが……。峰山藩に伝わる名刀に隠された秘密とは……?
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宗円坊が託したかったもの
岸井左馬之助と旧知の宗円坊が、何やら左馬之助を通じて平蔵に託したい物があるとの事。どうやらそれは鬼平の上司にあたる京極備前守と関わりがある物のようだ。左馬之助や平蔵はその物が何かを知らずして、宗円坊の江戸入りを迎えるつもりではあった。
しかし哀れ、旅の露と消えた宗円坊。その最期を看取って、左馬之助にその物を届けたのは明神の次郎吉という盗賊だった。盗賊ながらも心に血の通った次郎吉、ところが盗賊を取り締まる立場の鬼平。さて、どことなく憎めない次郎吉に対し、鬼平はどのように接していくのであろうか。
自然のおくりもの
左馬之助が手土産で持って来た鮎といえば、江戸時代よりもずっと前から高級魚として扱われて来たのだ。鮎が獲れる地域では特に色々な料理として発展してきたようだ。“うるか”という言葉に馴染みの無い方もいるかもしれない。
うるかは鮎の内臓を使った塩辛の事で、ご飯に乗せて食べたり、酒のつまみとしても絶好の料理なのだ。うるかにも地方色があって、白うるか、子うるか、苦うるか、身うるか、切りうるか、などなど色々なうるかが存在するぞ。うるかは消化を助けるとも言われていて、ご飯や酒が進んでしまうのが飽食の現代においては難点かもしれないな。
下賜された家宝の名刀
宗円坊が鬼平に託したかった物は、京極備前守が藩主の峰山藩に伝わる家宝であった。作中に描写はなかったものの、代々伝わる家宝の名刀である事から、将軍家から下賜された物であろう。それほど大切な名刀を、藩主たるもの気軽に扱って良いはずもないのだが。なぜその名刀を宗円坊が持っているのかも、謎は深まるばかりだ。
宗円坊の過去が明らかになるにつれ、峰山藩が持つ恥の部分も如実に現れてくるあたりが面白いぞ。京極備前守が先代から何を学び、そして人格者となったのかを垣間見る事も出来るのだ。そして善い心を持っていれば、鬼にもご慈悲があるという事。本作を通じて、“心の在り方”について学ぶべき事もたくさんありそうだ。
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滝田 莞爾
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