この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。日本の大手銀行を手に入れるための壮絶なTOB合戦を描く経済モノ。米のEC最大手「ナイル」の女帝・ロペスは金融進出を計画、日本のやまとFGに狙いを定める。やまと側のホワイト・ナイト、呉との手に汗にぎる経済戦争がみどころ。
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もしも「密林」がナイルであったなら
GAFAの一員、巨大通販小売業・邦訳「密林」が、ナイルのような企業だったら、という設定で、そのナイルが日本の金融に触手を伸ばすという話である。メキシコ国境に壁を作った『夢の国』の主役プラントが、ロペスの知略にほぞをかむのも面白い。
プラントは「不法移民は出て行け」と叫ぶが彼の祖先は先住民をだまし、辺境へおいやり、その子供たちを拉致同然に寄宿舎へ収容し、非人道的な方法で文化的に同化させた罪深い移民ではなかったか。この地球上で祖先に遡っていけば、移民ではなかった民族を数えたほうが早いと思われるのだが。
まさかの預金手数料がささやかれる時代
そもそも銀行とは預金者からお金を預かり、投資先へ資金を提供して金利を預金者へ還元する機関のはずだった。日本の定期預金金利が1%以上だったのはいつだったか思い出せない。窓口で定期預金を解約して帰ろうとしたら「お客様お利息が」の声によくみるとトレーの隅に1円玉が貼り付いていた、という笑えない話もある。
最近は預金に手数料をかけようかという議論さえあるらしい。銀行に預けて金利がつかないどころか、手数料を取られ、死亡したら口座が凍結されるなら、高齢者は多額の現金を手元に置くことになり犯罪の温床になるだろう。
女一匹、日本金融界への殴り込みの行方は
かつて金融ビッグバンといわれた時代、メリルリンチ、シティバンクなど外資系金融機関が日本の個人向けサービスに進出したが、収益の上がらない焦りか同業の嫌がらせか、度々金融庁からお叱りを受け、結局撤退している。ロペスの試みは果たして成功するのか。
彼女の「日本政府で私に会う勇気のある方はいらっしゃるかしら」という鋭い皮肉が痛い。同時に彼女の語るデータとそのあり方も重要な示唆に富んでいる。横ならび志向の強い日本の銀行でこのような大胆な戦略をとり、エジプト、ならぬ、日本はナイルの賜、という日は訪れるだろうか。
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野原 圭
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