この記事の目次
簡単なあらすじ
第18巻収録。掏摸師の伊太郎が陰陽師・山口天竜から袱紗を盗み、平蔵に捕縛される。袱紗から発見された白い粉は舶来製の猛毒だった。捜査線上には将軍御側衆の要職をつとめる土屋左京教明の影が。幕閣を揺るがした暗殺未遂事件の全貌とは……?
スポンサーリンク
大金を掏らわば毒まで
毒薬を巡っての幕府までも揺るがしかねない大事件のストーリーだ。またもや大身旗本の不祥事といえる事件だろう。以前に比べると金周りが良くなったらしい山口天竜ではあったが、懐のモノはあまりにも問題が大きいモノだった。掏摸の伊太郎が天竜から掏り取ったモノが大問題へと発展する。
笹竜胆の紋から繋がる大身旗本への捜査、そして火盗改メでは捜査を出来ない葛藤が鬼平を悩ませる。とは言え、将軍家にまで累の及びかねないこの事態だ。鬼平たちの必死の捜査で毒による被害を食い止める事が出来るのか。ストーリーを取り巻く規模の大きい期待作だぞ。
家長の責任問題
毒薬をどこの誰が、誰に対して使おうとしたか、大身旗本の当人は何も知らなかったという事になる。用人が首謀者として巻き起こった事件なので、本当に当主に責任があるのか、と考えてしまう。しかし武家で起こった不祥事の責任は、その当主にあるとされるのが武家社会の考え方だ。
現代では責任逃れに翻弄する責任者が多い。どちらが良いとは一概に言えないが、部下や従業員の不祥事に対して責任者がしっかりと責任を取る。江戸時代には当たり前だった事が、現代人の私たちに出来ないというのも恥ずかしい話ではないかな。
築地界隈を歩いてみる
山口天竜が毒薬を渡す密会の舞台が、御船宿の相模屋だ。本願寺の南にあると作中で記されているな。現在、築地は一丁目から七丁目まであるが、当時は地名も範囲もだいぶ異なったぞ。東京メトロ日比谷線の築地駅を上がった所に築地本願寺がある。
そこから晴海通りへ出ると元魚河岸の築地場外市場が広がるのだが、左折方向が小田原町の界隈となる。そのまま進むと門跡橋があって、更にそのまま進むと左右共に小田原町の辺りだ。本作に登場する地名をなぞって散歩する。これもまた時代劇作品の醍醐味かもしれないな。
この作品が読める書籍はこちら
滝田 莞爾
最新記事 by 滝田 莞爾 (全て見る)
- 鬼平犯科帳 漫画:第265話『同門の宴』のみどころ - 2022年9月9日
- 鬼平犯科帳 漫画:第48話『おしま金三郎』のみどころ - 2022年9月5日
- 鬼平犯科帳 漫画:第67話『殺しの波紋』のみどころ - 2022年9月1日