この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第27巻収録。戦後間もない東京で一家5人が殺害される凶悪事件「芹沢家殺人事件」が発生。捜査が進むにしたがって浮かび上がる謎。芹沢家は戦時中、誰一人として軍隊に召集されていないのだった……。唯一の生存者である五郎が、じつは幼き日のゴルゴではないかという仮説で迫るミステリー巨編。脚本:浜家幸雄
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ゴルゴが写真でしか出てこない
この芹沢家殺人事件はゴルゴのルーツエピソードのひとつだ。旧リーダーズチョイスでは2位、ゴルゴ学では堂々の1位と読者からの人気も著しく高い。初期作品だが最高傑作だという声すら聞かれる。反面、この芹沢家殺人事件はゴルゴが登場しないことでもよく知られる。ゴルゴは1コマしか出ないのだ。
しかも写真での登場。なぜそれでここまで人気が高いのか考えてみたが、エピソード自体がシンプルで判りやすいのにゴルゴ13らしいダイナミックな展開なのだ。深みのあるサスペンス仕立てなので読みやすく、それでいて読了後の満足度は高い。ゴルゴ本人がいっさい登場しないのにオチでは「ああ、ゴルゴらしいな」と思わせられる。

ゴルゴのルーツに最も近づいたエピソード
この芹沢家殺人事件でゴルゴの正体とされる人物が芹沢五郎だ。ゴルゴ学で「生い立ちから考えると最もゴルゴに近いのが芹沢五郎」と評されている。確かに暗殺一家の末裔というのはゴルゴ13というキラーマシーンの出生としてはこの上ない生い立ちだ。
さらに青年時代の芹沢五郎が成功させた狙撃や殺人も同様に、いっそ美しくすらある完全犯罪だった。しかも作中のセリフを借りれば「殺人ではなく、ただの整理でしかなかったはずだ……」これはゴルゴの仕事とまったく同じだ。とはいえ他のルーツエピソードと同じく、真相が明かされることはない。
ゴルゴに魅入られた男がまたひとり
ゴルゴのルーツエピソードにつきものなのが、ゴルゴのルーツを深追いして命を落とすキャラだ。中でも今回の安井修記郎は刑事として芹沢家殺人事件を追い続けた結果ゴルゴにたどり着き、最後には自身の狙撃をゴルゴに依頼する。
なぜ彼は自分の命を捨ててまで芹沢五郎=ゴルゴという図式を証明したかったのだろう。そもそも、芹沢五郎が芹沢家の惨殺事件の犯人ということさえ安井の推理に過ぎないのだ。芹沢五郎=ゴルゴが立証されたとして、あるいはされなかったとして、それ以上のことは安井が死んでしまっては追及できない。
元の目的は芹沢家殺人事件の解決だったはずなのに、いつの間にかゴルゴの正体にこだわっている。安井を始めとしてルーツエピソードで命を落としたキャラたちはゴルゴという存在に魅入ってしまい、戻れなくなってしまっているように思える。ルーツエピソードに出てくる彼らは、実はいずれもゴルゴに心酔しているのかもしれない。

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大科 友美

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