この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第53巻収録。藩の御用金を輸送する一行が襲われ、五千両もの大金が奪われた。京極備前守から直々に捜査を命じられた平蔵は一路、越後へ。唯一の手がかりは、一味の一人が肩に傷をおっていることだった。立ち寄った温泉宿で、平蔵は奇妙な二人組に出会う。その内の一人には、肩に傷があった……。
スポンサーリンク
出張のお伴
公金強奪の事件を追って出張をする事となった平蔵。出張の伴を命じられたのはやはり忠吾だ。平蔵が遠出をする際には同心が随行する事が多いのだが、その中でも圧倒的に多いのが同心の忠吾だろう。
忠吾がお伴をするエピソードは挙げればキリがない程に多いのだ。残念ながら忠吾のおとぼけエピソードを見る事は出来ないが、旅のお伴に忠吾。これはもう鬼平ファンにとってはお約束と言ってもいいのではなかろうか。
渡世人はつらいよ
親分の敵討ち部隊として登場する爺さん、一宿一飯の恩義に報いる渡世人という肩書で描かれている。さて、無宿渡世人という肩書は、何やら格好の良いイメージがついて回る部分があるのではないだろうか。
やはり『木枯し紋次郎』をはじめ、時代劇小説や時代劇ドラマなどでの印象が大きいと思われる。しかし江戸時代ともなれば、実際には非常に大変な生活を強いられていたようである。在郷を離れて行方不明になる事は人別帳から外れて無宿の身分となるのだが、無宿はその時点で取り締まりの対象なのだ。
無宿が生き延びる為にはやはり博打打ちになる者も多かったらしく、それならば方々の親分の手下となって生活をするしかない。一宿一飯の恩義と言われる表現は、つまり親分の手下として面倒を見てもらうという意味だ。そして親分を転々として地方を流浪する渡世人、というイメージが出来上がって行ったのだろうな。
偶然の出会い
渡世人として親分の仇を追って来た爺さんと、親分を討った仇の若造の二人。やはり縁として非常に深い関係にあったようだ。女性の心に深い傷を負わせてしまった事に対しての反省もあったようで、平八の強がる姿勢と行動はなかなか若い男性らしい感情表現だろう。
万事ハッピーエンドという訳にはいかなかったが、甚五郎と平八との心の繋がりは、平八の今後の人生にも大きな変化を与えたのだと思う。むしろ心温まるエピソードに纏まっている作品だ。短編作品としては読みやすく、また分かり易いストーリーなので、鬼平犯科帳初心者の方にもお勧め出来る作品だぞ。
この作品が読める書籍はこちら

滝田 莞爾

最新記事 by 滝田 莞爾 (全て見る)
- 鬼平犯科帳 漫画:第265話『同門の宴』のみどころ - 2022年9月9日
- 鬼平犯科帳 漫画:第48話『おしま金三郎』のみどころ - 2022年9月5日
- 鬼平犯科帳 漫画:第67話『殺しの波紋』のみどころ - 2022年9月1日