この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第51巻収録。イギリス王室の美術顧問・ロバーツがKGBのスパイだったことが判明した。ロバーツは修復と称して絵画を持ち出し、贋作画家のケアンクロスに贋作を作らせたうえで、本物は海外に持ち出していたのだった。ロバーツはケアンクロスが修復中の「モナリザ」もソ連に持ち帰ろうとするが……。脚本:きむらはじめ
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名画モナリザを標的にゴルゴの技が冴える
ゴルゴの特殊なスナイプの例として話題に上ることの多い本話。今回の依頼は、名画「モナリザ」のレプリカの片目を正確に撃ち抜いてほしいというもので、しかも狙撃はモナリザがカバーに包まれた状態で決行されている。
ゴルゴは、事前に「透視方眼図」で記憶していた寸法を頼りに狙撃するという方法で、この高難度の依頼を成功させるのだ。角度だけでの狙撃といえば、図面を頼りに原発の冷却パイプを撃ち抜き、原発事故を阻止した名作『2万5千年の荒野』も思い出される。機械のような目と腕を持つゴルゴにとっては、このくらいは朝飯前だったか。
モナリザに取り憑かれた贋作画家の末路
依頼人の動機もなかなか突き抜けている今回。贋作画家のケアンクロスは、モナリザの魅力に取り憑かれ、ゴルゴに大金を積んでまでモナリザを手中に収めようとする。モナリザに修復を施しながら「わしは……レオナルド・ダヴィンチだ!」と一人で興奮しているシーンなど、堂に入った倒錯ぶりが印象強いキャラだ。
そんな彼の物語は、念願のモナリザを手に入れたかと思いきや、敵の仕掛けた時限爆弾に気付くというラストシーンで締めくくられる。あえて爆発のコマを描かないのが演出の妙。愛するモナリザと運命を共にして、彼も本望だろうか。
相手の目で贋作を見抜くゴルゴの「鑑定眼」
本話の標的は「63番目のモナリザ」と呼ばれるが、現実にもモナリザには多くの別バージョンが存在している。ルーブル所蔵の真作の他に、モデルが10歳ほど若い「アイルワースのモナリザ」、初期の模写とされる「ウォルターズ美術館のモナリザ」、ダヴィンチの没後に製作された「レイノルズのモナリザ」などが有名だ。
尚、さすがのゴルゴも絵画は専門外のようだが、報酬がわりに贋作を提示してきた依頼人の出来心を、「おれには絵の真贋などはわからない……しかし、人間の目の動きの真贋はわかるつもりだ……」と看破する展開は痛快の一言である。
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東郷 嘉博
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