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簡単なあらすじ
SPコミックス第51巻収録。シリーズきっての人気テーマ「出生の秘密シリーズ」の第5弾。中国革命の指導者にして毛沢東の戦友・葉剣英。余命わずかとなった彼は、毛沢東が残した遺言「小東郷を捜せ」を実行に移すべく立ち上がる。旧日本軍のエリート・東郷宗介とは何者か? 日本軍が行った謎の計画“ルーベンスボルン作戦”とは何か? ゴルゴにジンギス汗の血が流れているといった仮説で迫る歴史ミステリー。
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もしもあの子がゴルゴの幼少期なら
ゴルゴのルーツを探るエピソードはどれも人気が高い。個人的にはこの毛沢東の遺言が特に好きだ。というのも、小東郷の見た目が普通の子どものようで愛らしく思えるのだ。いがぐり頭、意志の強さを伺わせる黒目がちの大きな目、凛々しいものの少したれ気味の眉。
毛沢東の英才教育を受ける場面が数ページ続くが、一生懸命口を結びしごきに耐えている表情が見られる。これがゴルゴの幼少期だとしたらあの冷酷無比な男にもこんな愛い時代があったのか…とにやけてしまう。もちろん実際どうなのかは作中で明かされることはないが、想像するだけで楽しくなるのだ。
ルーツエピソードが重なり合う
この『毛沢東の遺言』は『ミステリーの女王』『日本人・東研作』という2つのルーツエピソードが関係してくる。基本的にエピソードごとが独立しているゴルゴにしては珍しい。ゴルゴのルーツを探りながらも存命であるマンディが登場するのはまだわかるが、ゴルゴの手で亡き者にされたマッジまで出てくるのは驚いた。
しかも「マッジの草稿がビニール袋に密閉されて偶然無名作家の元に流れ着いた、その情報を弁公室が偶然盗聴していた」というのはいささか荒っぽい筋に思える。確かにゴルゴが「ミステリーの女王」で原稿や資料の処分を確認したのかといえば答えはノーなのだが…。どうしてもこの点に違和感は残る。
深みで溺れるとしても知りたくなる
今作で軸となって動くキャラは中国弁公室第四処の3人だ。作中の情報では、弁公室第四処は中国の情報機関らしい。そこに所属するほどだからこの3人は優秀なのはもちろん、機転も聞き、世渡りもある程度上手い人間のはずだ。3人が小東郷=デューク東郷説にたどり着いた時、日本の内閣調査室の官僚が手を引くべきだと忠告している。
その後さらに調査を進めて出会うマンディも彼らを止める。それだけ言われれば、正規の命令でも無し、手を引いて適当な報告をして終わりにしそうなものだ。それでも調査を続けたのは想像になるがゴルゴに近づくほど深く調べずにはいられなくなったのではないだろうか。ゴルゴには不思議な魅力がある。多くの人間が命を落とさざるをえないほどの。
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大科 友美
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