この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第111巻収録。テロリストのカルロンテの暗殺を請け負ったゴルゴ。カルロンテは超厳重な警備を誇るサンテ刑務所に収監されているため、狙撃のチャンスは36000秒分の1秒の一瞬だけだった。その一瞬を捉えるため、特殊な薬物を使って10時間以上、狙撃姿勢を保つことにしたゴルゴだったが……。
短編ながら読み応えのあるエピソード
このエピソードは他のエピソードの1/3程度しかページ数が無い。それでもこの話は初代リーダーズ・チョイスで上位入賞する人気エピソードのひとつだ。ゴルゴ自身が選んだ協力者から裏切られるというめったにない展開が気に入られているのだろうか。私はこの裏切り者デグナーが嫌いではない。
プロでありながら人間の弱さが滲み出る様は憎めない。デグナーがゴルゴを裏切ったのはカネのためだった。ゴルゴからの報酬も借金の返済ですぐに消えると言った彼は生活にひっ迫していたことが伺える。もしデグナーが少なくともカネに困らない生活を送っていたら、彼は最後まで、そして夢をみれば今後もゴルゴの良い協力者たりえたのではと思うのだ。
10時間に1度の1秒をとらえるゴルゴ
このエピソードの人気が高い理由はさらに考えられる。ゴルゴが今回も神業としか思えないショットを成功させているからであろう。なんと10時間もの間1か所を見つめ続けて、たった1秒のチャンスをものにしなければならないという依頼だった。
さしものゴルゴも10時間もの間微動だにせず同じ姿勢を取り続けるというのは薬の力を借りなければ不可能だった。とはいえ今試してみたが、常人の私は数分動きを止めるのも難しい。作中にもあるが、少しの間同じ姿勢を取り続けるだけでも筋肉がこわばるのがわかった。かのゴルゴでも特別製の薬を使わなければならないほどの難易度なのも頷ける。
協力者はいつ裏切り者となったのか
デグナーはゴルゴの身体能力に驚き、惚れ込んだ心情描写がある。だからこそ薬を使用したあとのマッサージを自ら申し出たようなていで描かれていた。だがゴルゴと再会したとき、デグナーは知人の元上司に依頼されたと言ってゴルゴに銃口を向けた。果たしてデグナーはいつ裏切り者になったのか。
もしかするともとから仕事後薬で満足に動けないゴルゴを狙うつもりでマッサージを申し出たのかもしれない。しかし私はデグナーはその時は本当にプロの使命感に突き動かされていたのだと思う。そう思いたい。デグナーもひとときはゴルゴに陶酔したプロのひとりだと信じたいのだ。
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大科 友美
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