この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第21巻に収録。粂八の下で働く舟頭・弁吉が、第二十巻「引き込み女」で平蔵が取り逃がした磯辺の万吉を発見する。万吉の狙いは火盗改方に通じる居酒屋・信濃屋が匿っている”ある男”を殺すことだった。平蔵は万吉に妹分を殺された五郎蔵とおまさに仇討ちの場をセッティングする。「引き込み女」の続編ともいえる一編。
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お元の仇、磯部の万吉
前作、『引き込み女』にて半ば恋仲でもあった盗賊に殺害されたお元。おまさの妹代わりともいえるほどの仲で、お元を殺されたおまさは復讐を誓っていたのだ。万吉の行方を追う五郎蔵は昔の手下が営む煮売り酒屋を訪ねるも、何やらよそよそしい態度に釈然としないようだ。
一方、万吉から暗殺依頼をされた剣客は小塚原(こづかっぱら)にある道場へと尾行され、火盗改メに所在を知られる事となった。その道場への捜査を任された沢田小平治と木村忠吾だが、小平治といえば剣術の達人だ。ただの捜査ではなく、鬼平から道場破りを指令されていた小平治たちのアクションシーンも見ものだな。
お江戸で悪さをするなよ
本作では無我無敵流の道場がある小塚原が舞台の一つとなっている。日光街道沿いにある処刑場で、小平治が言う通り罪人を獄門に処する場所だな。刑場の多くは街道沿いにあったと言われるのだ。これは江戸に入る旅人に対して晒し首を見せる事によって、江戸の治安維持に一役買っていたとの事。
しかし、いかなる罪人であろうとも、彼らを供養していた事もまた見るべき点だろうか。小塚原回向院や延命寺の首切り地蔵などを見るに、当時の死生観や死者に対する弔いの心を垣間見る事が出来そうだ。小塚原はJR南千住駅からの散歩で巡る事が出来るぞ。旧日光街道沿いを通った旅人の気持ちになっての散歩も良いのではないかな。
暗殺当日の夜
煮売り酒屋、信濃屋の二階に滞留している今里の源蔵こそが、万吉の付け狙う暗殺対象だったのだ。本格の盗賊で心の持ちようも盗賊らしからぬ清々しさを持つ源蔵だ。万吉が源蔵を狙うエピソードも、悪事に悪事を上塗りする生き方の愚かさが表れているのではないだろうか。
無我無敵流の剣客と鬼平の一騎打ちも、鬼平の強さがしっかりと見えて素晴らしい。そして万吉の悪あがきにより、おまさが人質にとられての危機を救ったのは。見どころ満載の本作は、前作のストーリーを知る事で更に楽しめるかもしれないぞ。
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滝田 莞爾
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