この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第28巻収録。江戸の蕎麦屋「金太郎そば」。女主人・お竹が肩の刺青をしょって、出前に走り回る姿が評判だ。一方、老舗の醤油問屋・横田屋に賊がはいる。被害額は小額だったが、賊は漁色家の婿養子・伊太郎の髷を切り、わら馬の玩具を残していった……。『用心棒』に登場したホラ吹き軍兵衛がゲスト出演。
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いっぱしの商人気取り
懸命に真っ当な道で生き抜こうとする、心の清らかな兄弟愛とその奮闘ぶりを描いた作品だ。若い時分に奉公先が廃業しようとも、健気に旦那の世話を続けた彼らに浴びせられた仕打ちとは。自らの蕎麦屋の広告のために、入れ墨を掘ってまで奮闘するお竹の姿には感動すら覚えるぞ。
過去に色々な経験があってこその気合の入れ方なのだろうか。辛い過去に捉われる事なく、自分達の力で人生を歩んで行こうとする兄弟を描いた傑作だ。努力する姿はきっと誰かが見ていて、そして応援をしてくれると勇気づけられる作品でもある。
油っこいものが大好き
金太郎蕎麦の出前でお竹が持って来たのが、かき揚げそば。あっさりとした醤油ベースの汁に、こってりとしたかき揚げの油が浮いた味は大人気だったようだ。江戸時代には肉体労働に従事している人が多かった事もあってか、今で言うジャンクフードが非常に好まれたという話があるぞ。濃い目の味付けにこってりとした油分。
疲れた体には染み入ったのだろうな。うなぎの蒲焼、かき揚げ蕎麦、いなり寿司……。江戸っ子に愛された食文化は大切にしたいものだ。しかしマグロのトロはほとんど食されなかったようで。今の保存技術が江戸時代にあれば、また異なった食文化の進化が見られたかもしれないな。
強く生きる力
女たらしで見栄っ張り、外見にこだわるだけの最低な男は昔からいたのだろう。そのような男に惹かれて痛い目にあった女性も多かったはずだ。しかしお竹は正しい心と覚悟を持って、努力をしてきた訳だな。
その頑張る姿を見て、応援をしたくなる気持ちはよく分かる。鬼平の配慮もあってお竹は真実を知る事もなく、今後も立派に生きていく事だろう。いつまでも表面上の輝き程度にしがみ付く男との対比が描かれていて、心地の良い作品だ。
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滝田 莞爾
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