この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第75巻収録。名バイオリニストのシンプソンは、オーケストラで愛器のG線が切れる事故に見舞われる。観客からの非難がトラウマとなり、次回のコンサートは中止に。代役がライバルのケルンスキーになったと知ったシンプソンは、ケルンスキーの演奏中にG線を狙撃するようゴルゴに依頼する。脚本:氷室勲
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狙いはバイオリンの弦
このエピソードは短く、ゴルゴは人間を狙撃しない。それなのに人気が高く、印象に残っているファンも多いエピソードだ。このエピソードでゴルゴが狙撃を依頼されたのはバイオリンの弦だ。演奏中に、一見狙撃だとは判らないように人間も楽器も傷つけず、ただ1本の弦を切ってほしいという依頼。
どこからどう見ても奇妙な依頼だ。だが決して簡単な依頼ではない。細い1本の弦を、細かく動きつづける演奏中に、奏者も観客も傷つけずに銃弾で切るなんて離れ業は確かにゴルゴにしかできない

ゴルゴの下準備の入念さ
ゴルゴはどんな仕事でも手を抜かない。短いエピソードながら、今回の依頼では下準備が丁寧に描かれている。狙撃相手の演奏ビデオを何十回、もしくは何百回と繰り返し見てイメージを固め、狙撃用の銃をオーダーする。ちなみに今回の狙撃用の銃はファンお馴染みの銃職人デイブに依頼している。デイブが登場したからエピソード自体の人気が高い可能性もある。
デイブ曰く「これくらいの仕事なら、そこらのチンピラでもできるが」と言っているのでゴルゴのオーダーにしては簡単な加工にあたるらしい。続くセリフは「このわしの正確無比の仕事を求めてるって訳だな!!」デイブがゴルゴから信頼されていることを感じ、嬉しそうに笑うのが不思議と微笑ましい。
プロの仕事は本番だけではない
今回の依頼人は狙撃相手を逆恨みしている。己の失敗から立ち直れないがためにライバルにも同じ屈辱を味あわせたいとゴルゴに彼の弦を切ることを依頼したのだ。依頼人も世界最高峰のバイオリニストなのだという。しかしライバルは弦が切れても他の弦を緩めることで演奏を続けた。
意図的なのかどうなのかはわからないが、ライバルのバイオリン奏者はどことなくゴルゴに雰囲気を似せて描かれているように見える。余計な言葉を話さず、本質を見、トラブルにも慌てず技量でカバーする。短い話のなかでゴルゴの下準備を細かく描いたのも、本当のプロとは何なのかを見せるためだろう。打ちひしがれる依頼人がそれを感じたかどうかはわからないが。

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大科 友美

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