この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第205巻収録。ドローンを使った次世代の殺戮部隊を開発したメイザーは、性能を証明するため殺戮実験を繰り返す。一方、腕の銃創を手当てしてくれた娼婦をドローン軍団に殺害されたゴルゴは、彼女がレストラン開業資金として貯めていた金で、ドローン軍団殲滅を請け負っていた……。
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ゴルゴに手傷を負わせた有能ターゲット
ヨハネスブルグに巣食う裏社会のボス、ピコの始末をゴルゴが請け負ったことから始まる本話。依頼は達成するものの、標的の反撃に遭って片腕を負傷するという、彼らしからぬピンチにも陥っている。
標的の居場所がこのエリアで唯一の高層建造物だったため、狙撃ができず直接乗り込まざるを得なかったのだと考えられるが、加えてピコの腕はゴルゴ自身も認めるところ。撃ち合いを回想し、何やら口元をつり上げているゴルゴの表情は印象的だ。ピコがゴルゴに手傷を負わせたことが、回り回って娼婦の敵討ちに繋がるのも、なんとも皮肉で面白い展開である。
ガリンペイロを思わせる大赤字の敵討ち
死にゆく運命の依頼人からは、時に破格の報酬で仕事を引き受けることもあるゴルゴ。かの名作『ガリンペイロ』でも、明らかに報酬より高価な兵器を総動員して依頼人の敵討ちに当たったのは有名だが、本話でもその再来とでも言うべき“大赤字”ミッションを遂行している。
貧しい娼婦達が汗水垂らして貯めたらしき金で、仇討ちを引き受けた彼は、トランク一杯の札束でイージス艦の乗組員を抱え込み、ジャミング電波で敵のドローンを無力化させるのだ。善悪の価値判断と無縁のゴルゴとはいえ、こうした勧善懲悪のような構図は読者も爽快だろう。
ドローンの「安全性」が生んだ油断
本話では、PMC(民間軍事会社)に軍用ドローンと、今日のロシア・ウクライナ戦争でも話題になる要素がいち早く取り上げられている。離れた場所から安全に戦闘を行えるドローンだが、非道な者の手に渡れば一方的な殺戮の道具となりえるのも作中で描かれている通りだ。
しかし、それゆえの油断こそがメイザー達の命取りとなった。「安全な場所で操縦し、幾らでも換えがきいたために、お前は戦場での一番大事なセオリーを忘れてしまったのだ……」と語るゴルゴの口ぶりには、プロが最も頼るべきは自らの五感だという、彼の信念が表れているようである。
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東郷 嘉博
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