この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第40巻収録。麻薬犬ピンキーは、麻薬を100%嗅ぎ分ける臭覚の持ち主。ピンキーの活躍により麻薬を密輸できなくなった麻薬カルテルは、組織No.1の狙撃手を差し向けるが、ピンキーの毛の色が背景と同じ色であったため失敗。切羽詰った麻薬カルテルは、ゴルゴにピンキー暗殺を依頼する。脚本:沖吾郎
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タイトルこそが最大のネタバレ
この話でゴルゴの狙撃対象となるのは人間ではなく犬である。それなのに何故タイトルがネタバレになるなのか。今回のターゲットは毛が灰色であるため遠くから視認しづらいという特徴があった。そこでゴルゴは蝶に作用するフェロモンを用いて大量の蝶を犬にまとわりつかせ、その蝶を目印に狙撃を成功させるのである。
蝶を利用した狙撃はタイトルになっている。にも関わらず読者にとって予想外の展開だった。無数の蝶に襲われた犬が撃たれた瞬間膝を打った読者は私だけではないはずだ。初読で狙撃シーンを見たときには、まるで難しいパズルが一気に組み上がったかのように爽快だった。
奇想天外なショットがリアリティを帯びる理由
ゴルゴは不可能を可能にするスナイパーである。狙撃を成功させるためには手段を問わない。ただ、それにしても蝶を目印にして犬を撃つというのは突拍子もない。しかしゴルゴは狙撃のために入念に準備をする。読者はその姿を見ているうちに狙撃に現実味を覚えるようになる。
そもそもゴルゴは根拠のないショットはしない。科学や計算に裏付けられた確かな一撃を放つ。このリアリティがゴルゴの魅力であることは言うまでもない。ストーリーの中心に現実世界の社会背景が据えられている。ゴルゴの狙撃も同じように現実に裏打ちされていて、決してファンタジーではない。
ゴルゴ13における犬のポジション
この話では犬が狙撃対象になるが、逆に『黄金の犬』のようにゴルゴの協力者として描かれることもある。ゴルゴ13には犬や猫などの小動物がたびたび登場する。とりわけ犬は人間と同じくらい表情豊かに描かれていることが多い。道を歩いているだけの野良犬も、毛並みの整った飼い犬もゴルゴには出てくる。
彼ら、彼女らはシーンによっては笑みをたたえていたり冷や汗をかいていたりする。犬はゴルゴ13において小道具ではなく人格を持ったキャラクターだと感じさせられる。今回狙撃対象となったピンキーも警戒心の強さや他の狙撃手の攻撃をすべてかわす能力をもっていた。犬でありながら、ゴルゴの狙撃相手として不足はないことが鮮明に描かれている。
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大科 友美
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