この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第143巻収録。全日本海運の社長・野口は、自社の船を海賊行為をはたらく駆逐艦に襲われ、積み荷を奪われたあげく、息子のように可愛がっていた青年・丹羽を殺されてしまう。海上保安庁に報復措置を願い出るも相手にされなかった野口は、ゴルゴに海賊一味の殲滅を依頼する……。
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やっかいな政府公認の犯罪
四方を海に囲まれている日本にとって船舶の安全航行は生命線といえる。今回はその生命線を脅かす海賊との闘いがテーマだ。日本がマラッカ海峡の船舶航行のための標識整備に貢献していたことが、ゴルゴのミッション遂行に深い関係を及ぼす。
自国の政府の政情不安につけ込み、海賊行為をはたらくインドネシア海軍は、おそらく軍や警察上層部に賄賂を渡している。だから丹羽晃が乗組員の眼前で射殺されても「そんな事実はない」と平然と回答するのだろう。資源の乏しい日本にとって他国の政情安定は自国の利益でもあることを思い知らされる。
摩訶不思議な記憶喪失のメカニズム
記憶喪失といっても症状はいろいろである。敏腕弁護士が、靴ひもの結び方も忘れてしまったり、隙のないスーツしか着たことのないバリバリのキャリアウーマンが、花柄のカワイイワンピースを買うようになったりすることもあるらしい。しかし、身体で覚えた能力は記憶を失っても残るケースが多い。
ゴルゴ自身も『バスク・空白の依頼』で記憶喪失を体験しているが、格闘・射撃など身体能力はそのままであった。ゴルゴが雇った「スズキ」こと丹羽も過去の記憶は失っているが操船や整備など船舶関連の能力については体が覚えていたと思われる。
人は今を生きた方が幸せなこともある
仕掛けた罠にはまり、約束通りおでましになった海賊の駆逐艦相手に、ゴルゴが「いい腕だ」と唸るほど絶妙の操船でスズキは見事にゴルゴのサポートを果たす。思わず漏らした「仇がうてたな」というゴルゴのつぶやきに、怪訝な表情を見せるスズキ。
もし『獣の穴』の話好きなご婦人がその場にいたら「あなたは20年前遭難した・・・」と事細かに事実を告げなければ気が済まないところだろうが、ゴルゴはそんな野暮な行為はしない。記憶を失ったとはいえスズキが改造船で密輸に関わっていることや今回のミッションの原因を思えば当然だろう。
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野原 圭
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