この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第129巻収録。独立戦争下のリトアニアにソ連軍が突入を開始した。友人同士だったエリカスとボレスラフは、独立反対派と賛成派として決別。戦場で相まみえることとなる。一方、独立運動の資金源となる大聖堂の地下に眠る国家財宝。この財宝をめぐって様々な陰謀が渦巻くリトアニアに、ゴルゴが姿を現す……。
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別れは足音もたてずに突然扉をたたく
昨日まで仲良く庭でバーベキューをしたり、困ったときに助け合い相談したりした、大切なお隣さん。その人たちに対し、ある朝突然、政府の命令で銃を向けなければならなくなる。極端な例ではあるが、日本に住んでいると理解が難しい民族問題とは、こういうことである。
これに「秘宝」などという利害が絡めば、事情はより複雑になる。最初は大義を掲げていても、時代の波に洗われていくうちに、次第に私欲にまみれてしまうのは人間の悲しい性だろうか。この秘宝を巡って、一体何人の血が流されたことか。ゴルゴもさぞあきれたことだろう。
世界を最も悩ますのは民族問題
ラグビーワールドカップ大会には「英国代表」というチームは見当たらないのにお気づきだろうか。「イングランド」「スコットランド」「ウェールズ」「アイルランド」と、英国圏だけ民族別に4つもチームが存在する。ラグビーは英国が発祥で、以前はフランスを加えて5カ国対抗という形で試合をしていた。
英国圏も民族独立の意識は高く、ラグビーにおいて民族独立を認め、不満解消のはけ口にしていた面がある。リトアニアは国家として民族独立に拘泥したが、こうして文化・芸術・スポーツにそれぞれの民族性を認めるのも一案かもしれない。
財宝は分断を招き、友情は融合を導く
京都人の言動は難しい。「どうぞどうぞ」とすすめられても固辞しなければならず、AI(人工知能)が京都の言葉を翻訳するのは無理だろう。同様に、ゴルゴの「リトアニアも立派な資本主義国家になった」という痛烈な皮肉もAIには理解できまい。
「ビリニュスの光と影」のタイトルは、読み始めたとき「光」は財宝「影」が民族抗争かと思ったが、読み終えたときは「影」は財宝「光」は友情のように思えた。ボレスラフとエリカスの関係は「遠くの親戚より近くの他人」という日本の諺そのものであり、民族問題解決の原点になるのではなかろうか。
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野原 圭
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