この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第129巻収録。世界中に張り巡らした盗聴網を利用し、ゴルゴに依頼しようとしている人間を探し出しては抹殺する暴挙をおかすNSAのフリーマン長官。そんなとき、日本の天才数学者・佐久が第三者による解読が不可能な暗号を発表する。NSAを脅かす最終暗号の完成を阻止したいアメリカ政府に対し、ゴルゴは佐久の暗号開発を手助けする。
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再び神を生み出したアメリカ
『神の領域』『神の滴』『神の鉄槌』のように、ゴルゴシリーズには“神”の付く作品がいくつもある。今回のゴルゴが対峙するのはアメリカのNSA(国家安全保安局)だ。彼らは電話を始めとした様々な通信機器を盗聴・分析して、FBI長官ですら、「“神の耳”をもっているのか」と愚痴るほどの力量を示している。
1993年発表の『神の眼力』では、アメリカの新型偵察衛星「KH-13」と国家写真監視センターのベルマイヤー博士と戦っていたゴルゴ。その5年後に本作でアメリカが生んだ新たな神と争うゴルゴは興味深い手段をとっている。
戦術核すら使うアメリカ
ゴルゴが選んだ方法は解析不可能な暗号を作る手助けをすること。ここで登場するのが日本人の天才数学者である佐久シゲル。
大陸横断列車に佐久とともに大型コンピュータや協力する数学者らを乗せて、暗号の完成を急がせる。同じ車内で仮眠するゴルゴの寝顔がなかなか可愛らしい。
特殊部隊が壊滅したことを知ったNSA長官のフリーマンは、アメリカ大統領に戦術核の使用を進言して許可を貰っている。モデルとなった大統領はビル・クリントン。この後、モニカ・ルインスキーとの関係が明らかになり批判の的になる。それを避けたくて核を使ったのだろうか。
三度アメリカが生んだ神との対決も
しかし核兵器の使用すら予測していたゴルゴは、約30年も前に造られたシェルターに列車を避難させることで、核爆発の直接的な被害は元より同時に発生する電磁波の影響すら無力化している。
この後、フリーマン長官はゴルゴに暗殺される。盗聴によってゴルゴへの依頼を何件も妨害していた身であれば当然の結果だ。もっとも死ぬ直前には完成した暗号の美しさに感銘しており、本望だったのかもしれない。
2002年発表の『神の耳・エシュロン』でも、ゴルゴはアメリカなどが作った盗聴システムに挑んでいる。「懲りないヤツらだ」とでも思っていそうだ。
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研 修治
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