この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第80巻収録。多国籍メジャーと犯罪組織が結託して穀物を買い占める事で、アフリカでは人為的な飢餓が発生していた。同じく先進国からの援助物資が、難民のために使われていないことも判明。事実を重く見たFAOは、犯罪組織の首領レ・バンの暗殺をゴルゴに依頼する。
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骨までしゃぶり尽くすピラニアか
今回の依頼の原因となる冒頭の話の醜悪さには胸が悪くなる思いだ。ユニオン・アフリカーヌという一見ボランティア団体かと思えるような洒落た名前の組織が、搾取と収奪を欲しいままにしている。
豊富な地下資源を奪うだけでは飽きたらず、地上の資源と労働力まで自分たちの欲望のために操り、飢餓と貧困を作り出している構図には、言葉を失うほどの衝撃を覚える。アフリカ問題はシリーズの定番だが、その広汎な内容には取材や資料収集力に頭が下がると同時に「もうアフリカのネタは尽きたよ」とスタッフが嘆く日は訪れないものかとも思う。
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笑えないゴルゴのジョーク
ゴルゴが無人の村に隠れていた少年を拾い、レ・バンの隠れ家へ急ぐ途中、警察のヘリが上空に現れる。「警察だって、いったいなんだろう」とおびえる少年に「たぶん信号無視だろう」と、めったに言わないジョークで返すゴルゴ。
おそらく信号を見たことのない少年にはそのジョークは通じなかっただろうが、その真意は「信号のない場所で信号無視の違反を問う」つまり、言いがかりをつけにきた、と解釈している、ということだと思われる。一瞬にしてレ・バンの手下どもを葬り去ったゴルゴに少年は唖然としつつも、憧憬と期待の眼差しを送る。
レ・バンは愛するアドルフを道連れに
保安官だった父親の敵としてレ・バンを狙う少年は、ゴルゴにとっては足手まどいであり、困惑している様子が伝わってくるが、同時に少年を止める手だてがないことも理解している。動物は互いの力量に敏感だが、あの猛獣を手懐けるとは、さすがはゴルゴである。
レ・バンは愛するアドルフが背負ってきた少年からの「お土産」によって始末される。ゴルゴは少年の遺言を見事に執行し、ミッションも完遂した。エンディングに掲載されている動物の骨の描写が真に迫り、熱砂の彼方には、果てしない飢餓と貧困が横たわっていると訴えているようだ。
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野原 圭
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