この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第131巻収録。最高級ワイン、シャトー・ラ・ミッションの78年物が発見された。このワインは、かつてオーナー自らが市場から回収した貴重な品だった。回収の理由は敵対するシャトーの陰謀により、中身が偽物にすり替えられた品が混じっていたため。今回発見された品が、その偽物のワインだったことが発覚したため……。脚本:国分康一
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フランスワインの凋落
「かみのしずく」で検索すると別な漫画が先にヒットする。その連載開始は2004年だが、本作は1998年発表。どちらもワインがテーマになっているのは同じだ。
本作でもボルドーにおける格付けなどを詳しく解説しているものの、1976年のワインコンテスト“パリスの審判”で明らかになったように、実質的にはボルドーを含めたフランスワインのレベルはもう高くない。しかし盲目的にフランスワインを信奉する人々は多い。登場する日本人商社マンであるフカマチが、「薄っぺらなワインブームに浮かれるだけの日本市場」と表現するのも無理はない。
ゴルゴに施した恩とは?
ゴルゴの依頼人であるジャン・エミールは死の間際にある父親から、「ただ一度だけ助けてくださる」と“神”への連絡方法を教わっている。『冥王の密約』でもゴルゴは恩人に連絡方法を残しているように、“神”がゴルゴであるのは言うまでもない。
ここで気になるのは、ジャンの父親がゴルゴにどんな恩を施したか、だ。父親が亡くなったのは1980年。1975年発表の『夜は消えず』でゴルゴはボルドーを訪れており、殺し屋と銃撃戦を繰り広げている。結果的にゴルゴは圧勝したものの、その後の逃走劇でジャンの父親がゴルゴを助けたのかもしれない。
世間的に抹殺したゴルゴ
ジャンはゴルゴに「誰も殺さない」「ワインの瓶を損傷させない」の条件を付ける。これに対してゴルゴは一般的に警護向けに使われている軟質性の木で作った銃弾でパニエ(ワインを入れて持ち運ぶカゴ)を狙ってワインを台無しにさせている。
誰も殺さず特殊な弾丸を使った依頼として『氷上の砦』が思い浮かぶ。殺伐とした話が多い中で間接的ながらも人助けに動いたゴルゴの活躍を読めるのはゴルゴファンに一服の清涼剤になりそうだ。またワインを台無しにしただけでなく、依頼人のジャンを陥れようとした2人は大恥をかいている。これもゴルゴの狙いだろうか。
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研 修治
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