この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス159巻収録。アイスホッケーの花形プレーヤー、フィッシャー。そんなフィッシャーに「強いアメリカ」のイメージを重ね合わせ、引退後は政治家への転身を進める選挙陣営は、フィッシャーのライバル選手が放つシュートに細工をしようと画策するが……。
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氷の弾丸か狙うターゲットとは
今回も『F-1サーカス』や『夢の国』などと同じく、人以外の狙撃を依頼されているが、その内容を聞くにつけ、人の狙撃の方がずっと楽なのではないだろうか。本作のもう一人の主人公フィッシャーは、東洋人に差別意識を持っているが、日本で真剣を受け止める修行をしていて、歴史ある文化には一目おいている。
選手生命を脅かされた直接の原因が、たまたま東洋人だったため、やり場のない怒りを彼らに向けていると思われる。衆人環視の中、万人に疑われないよう痕跡を残さずに数百キロで滑るアイスパックを仕止めるゴルゴの秘策に注目したい。
ウィンタースポーツは格差社会の象徴
冬のスポーツは世界の国の格差を如実に表している。理由は、ボール一つで遊べるサッカーやバスケットボールとはけた違いに高価な費用がかかるからだ。用具の質や維持管理が結果を左右し、スケートリンクなど練習場所の確保にも莫大な費用がかかる。ワンはたまたま天然リンクのある酷寒の地出身だったのが幸いしたといえる。
今回の狙撃術だが、先の冬季北京五輪でフィギュアの羽生弓弦選手が氷の穴につまずき連覇を逃した。あれも、中国系の選手に金メダルを取らせるために依頼されたゴルゴの仕業なのでは、と思わせる超絶技巧の技である。
プロの矜持を試されたフィッシャー
ゴルゴは常に、自分の仕事の結果がどう影響するかを考えている。フィッシャーの名声を利用して、議員、あわよくば大統領にまで、と目論んでいる男の依頼に対して「……」のセリフの彼の表情は非常に険しい。
フィッシャーのイベント撮影の日と同日の午後に射撃場を予約し、自分の練習場面を見せていたり、フィッシャーの優れた動体視力を確認した上で、彼が視認できるタイミングで狙撃を行ったと思うのは考えすぎだろうか。ゴルゴは、プロの矜持を持つフィッシャーに、あえて不正の事実を悟らせるような行動にでたように思われてならない。
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野原 圭
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