この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第90巻収録。F-1チーム「フィリップス・サワダ」の小西は、グランプリで優勝の手ごたえを感じていた。しかし親会社であるサワダ自動車は、フィリップス・サワダが優勝したことによって起こる、白人層からのサワダ・バッシングを懸念。小西に対して優勝を諦めるよう説得する…。
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ビジネスにも影響する優勝の栄誉
あのショパンコンクールでの日本人2位入賞は記憶に新しい。彼は6年かけて準備をしたそうである。ピアニストにとっても権威あるコンクールだがピアノメーカーにとっても熾烈な戦いらしい。ショパンコンクールで1位に輝いたピアノは大変な栄誉となり、ビジネスにも大きな影響があるからだ。
どのピアニストに選ばれるか、調律をどう加減する等、様々な駆け引きや苦労は、本作で描かれるF-1レースでのドライバーとエンジニアの関係さながらである。ゴルゴは今回も『氷上の砦』や『夢の国』同様、人物以外の狙撃で超絶技巧を見せてくれる。
一万円札の末裔もレーサーだった
レーサーといえば、一万円札の肖像である福沢諭吉の曾孫・福沢幸雄もレーサーだったが、ある自動車メーカーの車のテストドライブ中事故死している。遺族は車の欠陥を主張したが、証明されることはなかった。当時はライバル社とレーシングカーの製造にしのぎを削っていたので、そのあたりの事情も関係していたかもしれない。
外交官の父とギリシャ人の母を持つ福沢幸雄は、数カ国後を話し、容姿端麗、モデルにしてレーサーという、漫画にしてもできすぎではないかと思われる華麗な経歴ゆえに、天上の女神に愛されてしまったのではなかろうか。
鈴鹿での日本人入賞の陰にゴルゴあり
小西はレーシングチームの一員として勝利を目指しているが、サワダの社長は自動車メーカーの利益を第一義に考えている。これは『カメレオン部隊』のスレイマンと軍上層部の対立と酷似している。要人の狙撃など比ではない難易度の高いミッションだけに、疾走するレーシングカーに狙いを定める真剣なゴルゴのアップに痺れる。
それにしても、あらゆる分野で自分勝手にルールを変更・解釈して恥じない欧州人の東洋嫌いには辟易する。彼らには読売巨人軍の投手で戦火に散った沢村投手の言葉を捧げたい。「人に負けるな、勝て。しかし堂々と」
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野原 圭
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