この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第90巻収録。ナポレオン広場の工事現場から一冊の日記が発見される。その日記には驚くべき歴史的秘密が記されていた。革命200年祭を目前に、日記の公表しようとするルーブル美術館理事のエルデューだったが、秘密を公開されては困るフランス政府はゴルゴに接触を図るのだった。脚本:氷室勲
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印象的な登場人物達が織りなす歴史ロマン
革命200年を迎えるフランスを舞台に、革命時代の日記とオルレアン公の肖像画を巡るミステリーが展開する本話。ルーブル美術館の理事やフランス警察の敏腕女警視正など魅力的な登場人物に加え、果てはヒトラーまでもが絡み、一大歴史スペクタクルを織りなすさまは必読の価値ありだ。
中でも曲者なのが、絵画コレクターのルロワ氏。自分に代わって真実を公表するというエルデューとの約束を破り、ちゃっかり彼の保険金をせしめながら絵画の秘密も独り占めしてしまうラストは印象深い。金のこと以上に、収集家の欲とはそうしたものなのかもしれない。

すれ違いになった女警視正とゴルゴ
女警視正のソレイユ・パレストーラも、本話限りの登場にしておくには惜しいキャラだ。47巻の『メスリーヌの猫』に登場した実在の凶悪犯・メスリーヌの捜査にも関わっていたという彼女は、本話冒頭では、ゴルゴによる狙撃事件の捜査打ち切りを上から命じられて悔しい思いをすることになる。
だが、彼女が部下達に告げた「深入りは危険です。悔しいでしょうが忘れましょう」という言葉こそ、彼女の有能ぶりを物語っていると言えるだろう。これまで一体何人の刑事が「危険な深入り」で失敗してきたことか。女だてらに出世しているだけのことはある……。
水切りを思わせる水面跳弾で標的を狙撃
パレードに出演する標的を狙い撃つにあたり、その馬車が橋の上を通るタイミングをテレビ中継で監視し、川の水面に跳弾させてヒットさせるという離れ業を披露するゴルゴ。
見事に警備を出し抜いた上、狙撃位置の偽装により証拠も残さないという一石二鳥の策だ。32巻の『死角の断面』に始まり、跳弾というトリックは度々使用されているが、「水切り」よろしく水面を利用した跳弾が披露されるのは今回が初めて。水面跳弾は後の130巻『硝子の要塞』でも利用されており、ゴルゴの技量も日々進化を続けていることがわかる。

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東郷 嘉博

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