この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第47巻収録。超人的怪盗と称賛されたメスリーヌが、仲間のピエールの裏切りがもとで警察に射殺された。メスリーヌの女・ジャヌーは、メスリーヌの無念を晴らすためゴルゴを雇う。しかし依頼の現場を目撃した警察庁のブザールは、法律に従ってゴルゴに48時間以内の国外退去を命じる。はたしてゴルゴは48時間以内に仕事を完遂できるのか……?
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実在の犯罪者の死を素早く作品に反映
本話で語られるジャック・メスリーヌは、実在したフランスの犯罪者。強盗や殺人、脱獄を繰り返し、「民衆の敵No.1」の異名を取った男であり、本話冒頭での警官隊による射殺シーンも史実の出来事そのままである。
本話でゴルゴの依頼人となるジャヌーという女性も、実在した彼の妻(の一人)であると思われる。なお、メスリーヌが射殺されたのは1979年11月。本話が世に出たのは僅か半年後の1980年5月であり、実在のニュースを素早く作品に取り入れていることがわかる。さいとう先生のフットワークの真髄が垣間見える一編だ。
ゴルゴだって用は足す? 今回の面白シーン
本話の面白ポイントは、何といっても監禁下でトイレを要求するゴルゴ。「小便だ……」と言って実際にトイレで小用を足してみせ、続けて「今度はクソだ……」からの「我々東洋人は人に見られていたんじゃあ、出るものも出ない」との主張で見張りを遠ざけることに成功する。
「クソだ」の方はもちろん演技なのだが、あのゴルゴが無表情のままこんなことを喋っているだけでもシュールな笑いを誘うというものだ。ちなみに、中国では仕切りなしの「ニーハオトイレ」が一昔前まで一般的だった。「我々東洋人は」の発言はやや主語が大きい気もする。
主の仇討ちに役立った「メスリーヌの猫」
本話のゴルゴは、銃が使えない代わりに吹き矢で標的を仕留める一風変わった活躍を見せるが、それ以上にユニークなのは、メスリーヌの猫の瞳孔で時刻を知るくだりだ。現実には猫の瞳孔の大きさは光量や天候、体調によっても変化するので、機械のように正確に時を測れるはずがない気もするが……。
しかしそこはゴルゴのことなので、猫と過ごした僅かな時間に瞳孔の変わり方のパターンを目測して計算していたなど、いくらでも理由は考えられる。いずれにせよ、飼い主の仇を討つのに一役買ったこの猫こそ、今回のMVPに相応しいだろう。
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東郷 嘉博
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