この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第78巻収録。アメリカ人実業家のハロルドは所有しているコテージに篭もり、大好きなチェスのネット対戦に没頭。ハロルド暗殺の依頼をうけたゴルゴは、依頼の条件に従い「トーマス」と称してネット上のチェスゲームをハロルドへ要求。ハロルドの“あるクセ”を利用して狙撃のチャンスを窺うが……。
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チェスでも一流の腕前だったゴルゴ
人気漫画『暗殺教室』に「優れた殺し屋は万(よろず)に通じる」という台詞があるが、個人的にはこれはゴルゴから着想を得たフレーズであると思う。狙撃以外にもまさしく万事に通じるゴルゴだが、本話ではセミマスターの資格を持つ標的ハロルドをチェスできりきり舞いさせるという、底知れないスキルの幅広さの一端を見せている。
他人の棋譜を参考にしているとはいえ、自身も相当の棋力がなければ出来ることではない。また、そのゴルゴの棋風が「機械と対決しているよう」「人間臭さのようなものを感じない」というのも、実に彼らしい話である。
不幸なすれ違いが招いた友人達の破滅
ハロルドには、十数年前、全財産を賭けた友人とのチェス対決で、相手のミスに乗じて勝利を収めた過去があった。
全財産を奪われたその男の息子こそがゴルゴの依頼人なのだが、彼が依頼の際に「父は引き分けを狙ってわざとミスをしたが、ハロルドはその友情を無視した」と恨みを語っているのに対し、当のハロルドの方では「相手がミスしてくれて助かった」という認識でしかないのが闇を感じる。ハロルドの作中での描写は、今で言うアスペルガーのような気質を少なからず持っているようにも見えるが、この件は不幸なすれ違いとしか言いようがない……。
30年以上を経て圧倒的に進化したAI
コンピュータによるチェスの対局という、時代を感じる要素が主題となる本話。作中で言われているように、本話発表の1987年当時にはまだ短時間で人間に勝てるコンピュータは存在しなかったが、文庫版の解説で述べられている通り、その後すぐに人間はコンピュータに追い抜かれている。
そして文庫の時点ではまだ、チェスでは勝てても将棋では人間に勝てないと言われていたコンピュータだが、近年急速にAIの開発が進み、今や将棋でもプロ棋士のレベルを超えてしまったのは周知の通り。今ならゴルゴの作戦も本当にAIとしか思われないだろう。
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東郷 嘉博
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