この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。“謎の悪霊”が出没するロシアのラウル山脈。悪霊に妹を斬殺されたイヴァノバは悪霊退治を誓うが、村の男たちは悪霊を恐れ加勢を拒む。イヴァノバはSNSで募集した助っ人(ゴルゴ)を伴い、悪霊狩りに出陣するが……。ゴルゴも苦笑せざるを得なかったイヴァノバのキャラに注目。脚本:横溝邦彦
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最強の相棒を道連れに見えない悪霊と戦う
子供の頃、誰でも一度は透明人間にあこがれたのではないだろうか。透明人間になったら、家にあるおいしいお菓子を独り占めしたり、先生の作るテスト問題をのぞき見したり、子供の空想は可愛いものだが、大人が実際に手にするのは考え物だ。
匿名の世界、インターネットでの惨状をみてもわかるように、自分の存在が隠されていると、ここまで残虐な行為に走れるのかと思うと背筋が寒くなる。さしものゴルゴも透明人間には苦戦を強いられるが、果たしてその正体は何か。自然の厳しい地方ほど恐れられる迷信を利用した悪霊伝説にゴルゴが迫る。

ゴルゴを三度胸に抱いた唯一の女性
気は優しくて力持ちのイヴァノバは、小説「ババヤガの夜」の主人公・新道依子そのものである。そしてミッションのための芝居ではなく、本心からみせるカワイイ表情や、全身蜂の巣になった姿など、あまり見たことのないゴルゴが実に印象的である。
イヴァノバという、男女を超越した豪快で単純明快なキャラクター設定により、ゴルゴの新たな魅力が引き出されたといえる。何と、三度も彼女の胸に顔をうずめることになるゴルゴだが「俺が胸を借りたのは2度目のときだけだ」というかもしれない。薄気味悪い事件だがイヴァノバの存在に救われる
相棒の行く末まで考える周到さに脱帽
ゴルゴは一度言い出したら絶対に後へは引かない女の習性を知っている。だから、行動を共にする、というイヴァノバに、あえて安全な地帯での待機という役割を与える。いつもながらの絶妙な人の使い方や、彼女の逃走経路、ロシア以外での生活圏まで考えた配慮に脱帽する。
そして、未だかつて「おまえは俺の戦友だ」とここまでゴルゴに熱い言葉をかけてもらった女性はいないだろう。イヴァノバは、ゴルゴに関わった女性からは嫉妬にさらされ、もし『銀翼の花嫁』のミシェルに知れたらウクライナ全土は無人機で空爆され焦土と化してしまうかもしれない。

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野原 圭

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