この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第103巻収録。SSP社が開発したAI「ジーザス」が、予想を上回る成長スピードを見せ、ついには自分をキリストだと思い込んだ。ジーザスは2000年前に自分を磔にした男へ復讐するため、FBIの超一級犯罪者を網羅した「A-1リスト」にアクセスする。そしてジーザスが復讐する相手として選んだのはゴルゴ13の名前だった……。脚本:木村睡蓮
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ソフトが人間を超えた時代
昨今の将棋ブームの中心は藤井聡太棋聖(執筆時点)ながら、将棋ソフトの進歩も見逃せない。もはや普通の将棋ファンはもちろん、プロ棋士ですら将棋ソフトに勝つのは困難だ。しかしソフトが算出する評価値や候補手と見比べることで、新たなファンの獲得につながっている面もある。
本作に登場する自己成長型のシステムマネージメントソフト“ジーザス”は、開発者の夢をきっかけに自らの危険を感じてゴルゴの排除に乗り出す。危機管理予測の活用方法は無数にありそうだが、守る対象がジーザスだけでは無意味。FBIの職員がゴルゴと共闘するのも当然か。
人工知能の予測を超えるゴルゴ
本作のように人工知能が相手となる作品には『生存確率0.13%』『人工知能AIの誤算』『偽空座標X』などがあるものの、多かれ少なかれ人間の意図が絡んでいる。しかし自我を持った人工知能が相手となるのは珍しい。
ジーザスの目的を知ったFBI職員が、「SF映画じゃあるまいし」と嘆き、ゴルゴですら、「そんなSFを信じろ、と言うのか……?」と言うのも当然だ。結局FBI職員を信じたゴルゴは、宇宙空間にて核爆発をさせることで広い範囲に磁気障害を発生させてジーザスのプログラムを抹消した。人工知能の発想を越えたゴルゴの勝利だ。
ゴルゴにとって神の存在とは?
危機こそ去ったけれども、本作には謎が残されている。ジーザスの開発プログラマーが夢に見たゴルゴらしき男の存在だ。もちろん何らかの事件でゴルゴの存在を見聞きしており、かすかに記憶に残っていただけなのかもしれないが。
タイトルの「15-34」は、新約聖書にあるマルコの福音書の第15章34節を示している。広い分野で知識を有するゴルゴであれば、宗教に無関心でも聖書の一節をそらんじることくらいはできそうだ。しかし消えゆくジーザスに対して、あえて口にしたのは自らを神と勘違いしたジーザスへの憐みなのだろうか。
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研 修治
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