この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第29巻収録。イギリスMI5から最高機密が盗み出された。容疑者には偶然ロンドンを訪れていたゴルゴが入っており、ゴルゴの部屋からは小型カメラが発見される。誤認逮捕だったが、連行され拷問をうけるゴルゴ。ゴルゴを陥れた犯人は誰なのか? MI5内の二重スパイとゴルゴの対決を描く。
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「常連」ヒュームが10回目の登場
「ベスト4」に名を連ねるMI6のヒューム部長は、本話で実に10回目の登場。今回は事態が事態だけに、互いに警戒せざるを得ないのは仕方ないが、顔馴染みだけあってどこか親密さも感じさせる描写が興味深い。
ちょっと面白いのは、ゴルゴが「ヒューム……さん」と少し迷って敬称を付けているところ。実際は英語なので、一度「ヒューム」と呼び捨てにしてから「ミスター・ヒューム」と言い直したのだろうが、流石のゴルゴも得意先をあまり邪険にはできないと思ったのか。二人の関係は、この後も『ヒューム卿最後の事件』まで続くこととなる。

真犯人の陰謀に巻き込まれたアニタ
ゴルゴを罠に嵌めた「何者か」の陰謀が焦点となる本話。冒頭でゴルゴとベッドを共にしている高級娼婦のアニタは、何やら思わせぶりな台詞が多く、いかにも裏がありそうだが、意外にも他意はなかったことが後に判明する。
ゴルゴからはお金も受け取っておらず、ただ寝たくて寝ただけだったらしい彼女だが、直後に妹もろとも真犯人の二重スパイによって殺されてしまう。
ゴルゴの仕事に首を突っ込んだばかりに命を奪われる女性キャラは珍しくないが、アニタはたまたまゴルゴと寝ていただけで利用されてしまったのであり、あまりに不憫というべきか……。
報酬度外視で落とし前を付けるゴルゴ
本話のハイライトは、なんといってもゴルゴが機密を積んだ模型飛行機を撃ち落とすラストシーンだろう。自分を嵌めた二重スパイを独自に追い詰め、始末するゴルゴだが、機密を収めたフィルムは模型飛行機に乗せられて飛び立った後。
追いついてきたヒューム部長から1万ポンドの報酬で懇願され、飛行機の撃墜に応じるゴルゴだが、その後は報酬を受け取らずに立ち去ってしまう。
ヒュームの言う通り、ゴルゴとしては自分が嵌められた件の落とし前を付けただけということなのだろう。黙って立ち去る彼の背中(と言いたいが、実際は車)が美しいラストだ。

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東郷 嘉博

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