この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第29巻収録。労働組合の委員長として辣腕をふるっていたホッファは、汚職事件で懲役13年間投獄された。出所後、後任委員長のフィッツシモンズとの確執により、殺害されたとされていたホッファが突如姿を現す。これはKGBの陰謀でニセのホッファが作り出され、汚職事件の暗部を洗いざらい証言させる罠だった……。脚本:外浦吾郎
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初期作品では米国寄りだったゴルゴ
“東西冷戦”と呼ばれる時代がある。人によって定義は異なるが、第二次世界大戦後の1945年からソビエトが崩壊した1990年くらいまでを指している。
『ゴルゴ13』の連載が始まったのは1968年の冷戦真っ只中。フリーのスナイパーであるゴルゴがアメリカなどを始めとした西側陣営に属しているわけではないものの、連載当初はアメリカから依頼を受けてソビエトが敵となる作品が多い。
本作でゴルゴのターゲットとなるのは全米トラック労働組合の元委員長ジェームス・ホッファ。つまりタイトルにある“H氏”だ。しかしながら登場するホッファはKGBが作り上げた偽物のため、ここでゴルゴ対KGBの構図が明らかになる。
死体が判別できないかたちで……
直接の依頼者であるCIAから「死体が判別できないかたちで、始末してほしい」と依頼されたゴルゴは、実に大胆な方法で狙撃し遺体を始末してしまう。
行動開始から遺体の処分までの一連の流れを振り返ると、ゴルゴの追撃から逃げつついろいろと備えていたKGBですらゴルゴの手の内で泳がされていた感すらある。もしもターゲットの偽ホッファが街中でジッとしたままだったら、ゴルゴはどんな手段で“死体が判別できないかたち”の依頼を完遂できただろうか。
ゴルゴとKGBの関係。じつは……
本作でちょっと気になるのがKGBの一員である大尉の言葉だ。ゴルゴについて部下に語った中で、「わがKGBでも彼を何度となく使ったことがある」と言っている。
彼がゴルゴなのは言うまでもないが、冒頭に書いた通りどちらかというとアメリカ側に立つ作品が多いゴルゴ。大尉の言葉が正しいとすれば、まだ明かされていない過去の事件があるに違いない。それを知っているのは神とさいとうたかを先生だけなのだろう。
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研 修治
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