この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第129巻収録。ある仕事で依頼人の嘘が発覚し、ルールに乗っ取って“けじめ”をつけたゴルゴ。その直後、バスの転落事故に巻き込まれ大けがを負ってしまう。ゴルゴを救助したのは、始末した依頼人の友人で“聖女”と呼ばれるマザー・テレシア。彼女はゴルゴが友人を殺した犯人だと知りながらも、警察の追及からゴルゴを庇うのだった……。脚本:ながいみちのり
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スケールがあまりに大きすぎる感謝の印
もし親の葬式の時、よくわからない人からの香典袋に1億円の小切手が入っていたらどうすれば良いのか。税務申告しなければならないのか、香典返しは高級車かもしくは分譲マンションか、その場合の税金は……こんな妄想を抱かせる冒頭のシーンである。
今回登場のマザー・テレジアのモデルは、貧しい人々に献身的な奉仕をした聖女マザー・テレサだと思われる。彼女はアクシデントに見舞われ、意識を失ったゴルゴを看病し、ゴルゴの手による神父殺害の事件を追う警察からもかばう。彼女にとってはゴルゴとて、さ迷える一匹の子羊なのだろう。
いつの世にも存在する罪深い神父
最近、神父たちの評判はあまりかんばしくない。『聖なる銀行』でも取り上げられているマネーローンダリング、性的虐待、奢侈な浪費生活疑惑など、罪深き行いは枚挙に暇がない。この神父もゴルゴを偽り、自分が妊娠させたシュリーという女性を始末させようとする。不逞の輩とはまさにこういう男を指すのであろう。
引き金を引く直前、ゴルゴは女の妊娠に気づき狙撃を中止するが、その理由は、ストーリーの中で述べている「違和感」の他に『許された命』にもあるように、胎児の命は依頼に含まれていない、というポリシーによるものであろう
マザー・テレジアとゴルゴは似たもの同士?
かつてマザー・テレサは「貧乏人を甘やかしている」と批判されたのに対し「少しくらい甘やかしても良いではありませんか。金持ちは生まれたときからもっと甘やかされているのですから」と返している。
死にゆく重病人にガーゼを当てているだけ、と批判されることもあったが、誰にも看取られずに放置されるよりはどれだけ幸せだろう。「あなたに神の愛を説くことは無意味かも」とマザーがいうように、この2人は、一見全く異なる世界に生きている。しかし「自分のルールに従って生きる」という点については深い共感があるのではないだろうか。

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野原 圭

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