この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第86巻収録。殺し屋という裏の顔をもつ、ハーバード大教授のゴールドマン。彼のもとに一人の男が訪れる。男はかつて開発に携わった超高性能ライフルをめぐってゴルゴに命を狙われているため、先手を打ってゴルゴを始末してほしいという……。
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レーザーものは読み比べ必至のシリーズ群
『フィールド・テスト』のスピンオフというべき今エピソードは、ゴルゴシリーズにおいてさらなる連なりを見せる。武器が照準ではなく銃弾の代わりにレーザーを使用するレーザー銃(相手を失明させることを目的とする)へ進化し、『乳白の闇』『いにしえの法に拠りて』のエピソードへと発展する。
あまりこのような分類はされないが、ここでは“レーザーもの”シリーズとすることを提案しておこう。今エピソードでは総ガラス張りのビルであることから、レーザーの乱反射で難を逃れた。さしものゴルゴも光速無音のレーザー(兵器)への対応には苦慮している。各エピソードで様々な対処法が見られるので読み比べ必至のシリーズ群だ。
地味ながらゴルゴの能力の高さが窺える
ゴルゴの直感的分析力と調査力が素晴らしい。デトロイト空港で狙撃された一瞬のことから、ワールド・アームコ社の例の銃(『フィールド・テスト』参照)であることを見抜いた。そこから、ロゼリーからゴールドマン、ケネス捜査官へと辿ってみせた。ロゼリーからゴールドマンの線は、ロゼリーが口を滑らせたことから関連性を掴んだ。
が、“ゴールドマン”は本職のスナイパーではなかったので、ゴルゴにとって初めて聞く名前であったろう。またゴールドマンからケネスへの線はゴルゴにとってはミッシングリンクだ。しかしゴルゴの高い調査能力を駆使して二人を見事に炙り出した。
自虐の言葉が自虐として成立しない脇の甘さ
ゴールドマンの脇が甘い。ケネスとは自宅で、ロゼリーとは大学のオフィスで面会。秘密の副業(狙撃)ともなれば、密やかにやるべきだ。デトロイト空港で狙撃位置についてから初めてスコープの性能を実感しているのも驚きだ。
同様の条件下で基本中の基本であるゼロ・イン(狙点と実際の着弾点が一致するように照準を合わせる作業)を行わなかったようだ。死に際のセリフで「ふふふ……所詮、私は……アマチュア」という自虐の言葉が、自虐として成立していないことが米名門大学の教授にしては情けない。対照的にゴルゴの臆病なまでの用心深さが際立っている。
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片山 恵右
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