この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第54巻収録。前話からの続編。ソ連がメジャーから穀物を買う際、支払いに金塊を使用していることに着目した藤堂は、計画の切り札としてゴルゴを雇い”ある物”の狙撃を依頼する。藤堂が田畑・家屋を抵当に金を作るなど、再起にかける執念が見事に描かれている。藤堂とウノの友情も健在。脚本:北鏡太
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サムライ・藤堂伍一の痛快リベンジ
前話『穀物戦争 蟷螂の斧』で穀物メジャーをあと一歩のところまで追い詰めながら、ゴルゴの銃弾に涙を飲んだ藤堂。今回は逆に藤堂がゴルゴを味方につけて穀物メジャーに一泡ふかせるストーリーだ。弟がもつ田畑や家屋を抵当にいれ、親戚筋から借金をして軍資金を捻出する藤堂に悲壮感が漂う。
ボロアパートに商社顔負けの設備を整え、乾坤一擲の大勝負にでる描写はハードボイルドの極みといえよう。前話でも登場した盟友・ウノも健在。ゴルゴへの依頼は暗黒街をバックボーンにもつウノが調整している。そのほか物語のキーマンとなる保険引受人の誘拐など、本作でも活躍しているのは嬉しいかぎりだ。

ゴルゴと藤堂、緊迫の初対面。
みどころはゴルゴと藤堂が初対面する場面。ゴルゴが藤堂のような敏腕商社マンを相手にする場合、依頼ルールを熟知していない相手に対して「無駄話はいい。用件をいえ」と言い放つのはお約束だ。推察するにゴルゴは、藤堂に対してもこの言葉をぶつけてやろうと考えていたのではあるまいか。
なのに「さっそく用件に入ろう……いいかな?」と機先を制され、すこしムッとした表情をみせている。その後、穀物相場について熱く語りだした藤堂に対し「ムダ口はいいから、用件をつづけろ」と鬼の首を獲ったように言い放つゴルゴの表情は、「してやったり」という色が見えなくもない。
「ゴルゴ論争」が勃発。読者vs呉智英
本作をめぐっては読者と漫画評論家・呉智英氏による“場外乱闘”も勃発した。呉氏は雑誌『週間宝石』の書評欄において「ゴルゴが登場する必要はまったくない」とし、本作を名作だと称える読者に対しては「読者はバカだ」と言い放った。
これに激怒した熱狂的ファンが「三文批評家のたわごと」などと反論し、ビッグコミックの投書欄を舞台として延々4ヶ月も論争を展開。通称「ゴルゴ論争」が繰り広げられたのである。興味をもたれた方は呉氏の著書『バカにつける薬』をご覧いただきたいが、とにかくこれだけの大噴火を巻き起こす熱いマグマをもった作品であることは間違いない。ゴルゴ13、恐るべしだ。

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町田 きのこ

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