この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。静岡県で遊説中の国会議員が狙撃され、流れ弾で女性が死亡する。テロかと思われた矢先、被害者が特別な保険に加入していたことが発覚する。当時、被害女性の保険担当で、現在は新聞記者として活躍する室田は、事件には裏があるとみて調査を開始するが……。脚本:ながいみちのり
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掛け軸は見た、離れに残された秘密の数々
少し前、日本画家・鏑木清方の幻の美人画が発見され、国立美術館で展示されて大いに話題となった。長らく行方しれずとなっていたが、ある高級鰻割烹の地下の部屋にかくまわれていたらしい。この名画を見ながら食する鰻重の値段を聞いたら、名画の美女の目が飛び出すかもしれない。
旅館の離れも秘密がささやかれそうな場所であり、床の間の掛け軸も市原悦子の家政婦よろしく「ああまたヒソヒソ話」と思っているだろう。今回の事件も旅館の離れが発端となっている。日本の政治家の皆様もゴルゴにはひとかたならぬお世話になっているようだ。
華やかな世界の裏は火の車
世界的音楽家ダニエル・バレンボイムと夫婦だった名チェリスト、ジャクリーヌ・デュプレの父上はMI6の職員だ。彼女には公務員の給料では買えないような名器が「匿名のファン」から度々届けられたという。ファンの正体はいわぬが花だろう。
バレエ、音楽家など、華やかな世界ほど裏の苦労は底知れない。特に音楽の世界において楽器の値段は想像を絶する。制作者が亡くなっているバイオリンの名器ストラディバリウスに至っては、誰かが手放すときに言い値で買わなければならない。美千代が娘のために取った行動にもうなずける。
運の悪い男にならないための妙薬は忘却なり
警察が死亡事件の事件性を疑う理由のひとつに、保険金の存在がある。かつて「ロス疑惑」と言われた銃撃事件も保険が絡んでいたが、今回の真相究明はそれ以上に難しい。室田の使途不明金を追うしかないが、不明金が多すぎて無理かもしれない。
室田がゴルゴと出くわしたのは、多分偶然ではない。おそらく井田が、室田に感づかれた旨を伝えたことから、ゴルゴが念のための「調査」をしていたのだろう。眠れぬ夜を過ごした室田はこの件にはこれ以上足を踏み入れることはないと思われる。さもなければ自分が運の悪い男になってしまうだろうから。
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野原 圭
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