この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第24巻収録。徳次郎は髪結いをしながら、盗賊の引き込みもこなす小悪党。鈴鹿一味と手を組み、大店・水口屋を狙う。だが水口屋の主人・水口清五郎は、平蔵も舌を巻くキレ者だった……。はたして清五郎の正体とは? 伊賀vs甲賀の対決も背景にあり、読みごたえ十分。前話からの続編ともいえる内容。
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伊賀の忍者の恐ろしさ
女性を誘惑したつもりが、実は誘惑されていた。隠したつもりは本人だけ、という話を聞く事もある。鬼平は数多くの事件をその洞察力と観察眼で見抜いて解決してきた。とまぁ、いつもの鬼平犯科帳として読み進めるも、何やらテイストが異なるのだ。ストーリー展開も非常に面白いのだが、普段と異なる鬼平ワールドが展開されている。
本作の見どころはただ一点、忍者の恐ろしさをこれでもかというほどに見せつける部分ではないかな。鬼平と伊賀忍者の強力タッグが、完膚なきまでに盗賊を懲らしめる。成す術のない大物兇賊が憐れに思えるほどの、痛快な作品に仕上がっているぞ。
正しい日本語を使ってほしいぞ
おまさがおみねと再会したのが市ヶ谷八幡宮。門前には茶屋や楊弓場が軒を連ねる、とある。矢場を取り上げた作品には「矢飛白およう」があるぞ。庶民の娯楽から始まった矢場遊びだが、徐々に矢場女が売春をするようになり、治安が悪くなっていく。もう江戸時代のお約束だな。
矢場を営む者を的にちなんで的屋(テキヤ)と呼ぶようになる。悪いことは摘発されるわけで、捜査の手が伸びそうになった的屋たちが警鐘で使った隠語が“矢場い”。近年の若い子たちが好んで使う言葉だが、江戸時代にまで遡る古い言葉だったのだ。言葉の由来をわかって使って欲しいと切に願ったぞ。
忍者ってヤバいよね
忍び者といえば伊賀と甲賀が有名だろう。本作に登場する伊賀の音五郎も、伊賀の忍者として描かれている。忍者は戦闘員として素早い動きを得意とするイメージがあるかもしれない。しかしその実、忍者の恐ろしさはその“情報”にあるというのだ。
つまり情報戦のエキスパートが忍者で、その情報を集める事が隠密行動とも言える訳だ。伊賀者の情報網にかかれば、鋭い観察眼と危険察知能力に長ける鬼平ですら全て丸裸だった。刀ではなく情報で相手を簡単に殺す事の出来る忍者、敵には回したくないものである。
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滝田 莞爾

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