この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第20巻収録。見回りの最中、平蔵は尾行中の密偵・利平治と出くわす。尾行されている男は石川五兵衛という盗賊で、平蔵とは二十年も前に因縁をもった男だった。五兵衛は小間物問屋・錦屋に目をつけているようだが、錦屋には金はない。五兵衛はなにを目的に錦屋に近づいたのか……?
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女性が男性を買う?
古今東西の盗賊を多く見知っている流石の利平治、本作でも石川の五兵衛を発見するというお手柄だ。鬼平がどこかで記憶にある五兵衛だが、彼が生意気な小僧の時分に説教をした間柄だった。五兵衛が尾行していたのは、大店の女房。女房が役者を買春している現場を押さえていたようだ。
江戸時代は性に大らかとはいうが、女仇討ちという言葉もあるほど女性の不貞について厳しかったイメージもあるだろう。しかしながら、女性が男性を買う事は決して珍しくなかったのだ。役者買いから始まり妓楼に終わる、性風俗産業に関わる題材を扱ったストーリーだ。
身を売る男性たち
近代でも役者が贔屓の座敷にお呼ばれする事は普通の事だろう。舞台の合間を縫って座敷に上がる事もまた、仕事の一つとして考えられる。金銭面だけに限らず、スポンサーと良好な関係が築けなければ芸事に邁進する事は難しいのだ。
舞台に立つ前の若い男性の役者を“陰の間役者”と呼んだが、そこから転じて陰間を専業で雇い入れた店が発生する。要は男性が体を売る店で、陰間茶屋と呼ばれたぞ。若い時分には主に男性を相手に、年を重ねると主に女性を相手に身を売ったようだな。
色に狂った大店の懐事情
いかに大店で商売繁盛とは言えども、旦那は妓楼で大枚を叩き、女房は役者買いをするなどしていれば、金はいくらあっても足りる事がないだろう。見栄や一時の遊行に使う金額がこうも高ければ、盗賊が金蔵に入らなくても既に空っぽな事は想像できる。五兵衛が見据えていたのは、妓楼への潜入のきっかけ、つまり旦那の気分を良くして遊びに連れていってもらう事だった訳だ。
どうやら実際のところ旦那をおだてて遊びにひょっこり着いて行ったり、いつの間にか酒を拝借、なんてのは江戸市民にとっては日常だったようだが。現代とは違って、とにかく遊びも豪快だったという。旦那衆の金使いには粋すら感じてしまうぞ。しかし時には“がまん”も大切だな。
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滝田 莞爾
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