この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第200巻収録。アフリカの広大な農地を奪い取ろうと画策する、中国農業省の官僚・郭。その野望を崩すため現地へ潜入したゴルゴは、郭が放った殺人バエに襲われ、生死の境を彷徨う。ゴルゴが最大限の謝意を表した女性・エボニィも登場する。
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人を醜悪な怪物に変える飢餓の恐ろしさ
アフリカの広大な大地を食い物にする郭聡明とベアム、2人は金の亡者である。ヒルのように党や国家に取り付き利益を吸い尽くそうとする姿には背筋が凍る思いがする。私欲のためなら手段を選ばず、殺人も環境問題も知ったことではない。まさに「大洪水よ我の後に来たれ」である。
郭聡明は、毛沢東時代に経験した命を脅かされるほどの飢餓への恐怖に突き動かされているようだ。郭聡明を、ここまで醜悪な怪物に変えてしまった諸悪の根源は、貧困・飢餓にほかならなず、この悪循環は世界共通であり、ゴルゴに頼らず断ち切らなければならない。
シャーマンも時にはつらいこともある
グレートジャーニーで知られる、医者で探検家の関野吉晴氏は、未開の地で住民とのコミュニケーションを図るため診療所を開設した。医療に関してはシャーマンが役割を担っていたため患者が来るか不安だったが、何と最初の患者がシャーマンだった。
「頭が痛い」というので問診した結果摂取する麻薬量を減らすようアドヴァイスしたそうだ。ゴルゴが言うようにシャーマンにも種類があり、この人は祈祷専門かもしれない。未開の地に生息する生薬は効果の高いものほど、その処方は平安時代の「香」の調合同様秘密を守るため口伝であることが多い。
性暴力の被害にあった女性に捧げる名言
性暴力を受けたエボニィが「自分は汚された女」というのに対し「そんな観念は男社会のエゴの押しつけでしかない。女にとって男とは……」というゴルゴのセリフが感動的だ。性的被害にあった女性すべてに贈りたい。この一言を知るためだけでも、読む価値のある作品だ。
ゴルゴに襲いかかるピンチの連続にハラハラし、欲というヘドロにまみれた心の醜い人間、感染症の恐ろしさ、アフリカに横たわるあまりにも根深く困難な問題に、耐え難いほど胸の痛みをおぼえるストーリーだが、最後、2人が別れるシーンに心洗われ涙がこみあげてくる。
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野原 圭
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