この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第8巻収録。8年ぶりに刑務所から出てきたマックス。彼を一番悲しませたのは、愛していた女・ジニーが他の男と結婚して、自分から去ったことだった。ジニーを忘れることができないマックスは、銀行強盗で金を作り、ジニーを取り返そうと奮闘するが……。ゴルゴの登場シーンはほとんど無い。脚本:K・元美津
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依頼主の勘違いを正すゴルゴ
本作のゴルゴは、出番が少ないサブキャラクター的存在だ。前編には一切登場せず、後編になってやっと登場したと思ったら売春婦に言い寄られ、夜の街に消えて終わり、と初登場シーンにみどころはないように見える。
しかしこのシーンは、本作を読み終えたあとに再度読み返すことによって、サブタイトルや描写がラストの彼の行動に繋がる重要な場面であることが分かる仕掛けとなっている。そしてゴルゴは依頼達成を報告する際、依頼主の勘違いを正している。ゴルゴへの依頼に嘘は許されないが、ゴルゴを陥れる罠ではなく、本当にそう思って依頼していた場合はその限りではない点もみどころだ。
大物マックス登場
本作で主役を張るのは周りから大物と言われる男、マックス・ボイドだ。登場して早々に「マックス・ボイドってあの!?」と新人店員に驚愕されるなど大物っぷりを披露する。現在は強い酒を飲まなくなり、かつての想い人は結婚。そして若者との揉め事も避けるようになった、と老いを感じさせる人物として描かれている。
しかし街中で偶然見かけた爆発事件を、銀行への襲撃の前準備と見抜く勘は錆びついていない。この老いたマックスが時には若者に軽んじられ耐え忍び、時には年季の差を見せつけ圧倒する、そんな緩急のある彼の活躍が本作の白眉といえる。
濃厚なクライムストーリー
本作の物語はゴルゴを完全にサブキャラクターとして起用したミステリー『17人の渇き』と似たクライムストーリーだ。マックスの視点で描かれる煌びやかなシカゴの街。
うだつの上がらない彼の哀愁の物語から一転、かつての犯罪仲間と合流してからは水を得た魚のようにキレを取り戻すマックスが活き活きと描かれる。クライムストーリーにありがちな分け前で揉めるシーンはみどころで、マックスに「黒いゴリラ」と呼ばれ激昂したジョーとの対決は必見だ。いつもと違ったゴルゴシリーズを読みたい方に特にオススメ出来る作品になっている。
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小摩木 佑輔
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