この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第199巻収録。大手銀行への大規模なサイバー攻撃を防げず、信用を失ったネット防犯の専門家・ニコラス。彼は一流ハッカーのプライドにかけて犯人を追跡する。ニコラスに協力する謎の女・リアノンの目的は? 最強ハッカー“オクトパス”の正体とは? 白熱のサイバー戦争を描く。
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フィクションだけではないハッキングの脅威
悪意のハッカーによるサイバー攻撃という、今も昔も話題の絶えないテーマを扱った本話。ウイルスメールやフィッシングサイトといった古くから知られる手段に加えて、SNSの「いいね」を経由したD-DOS攻撃という時流に合ったフィクションもあり、虚実を取り混ぜた作劇には感心させられる。
2024年6月には、大手出版社・KADOKAWAの関連サイトがロシア系ハッカー集団の攻撃を受け、一般ユーザーを巻き込む騒動となったばかり。ハッキングは物語の中の出来事ではなく、現実に存在する脅威なのだと多くの人が実感したことだろう。
天性の色仕掛けが冴える美人捜査官
今も昔も、美女の色仕掛けは最大の「武器」の一つだが、本話に登場するインターポール捜査官・リアノンはまさにそれを体現する人物。ニコラスを一夜で籠絡したのを皮切りに、味方になりそうなハッカーを次々と体で落としていくさまは、正義の目的のためとはいえ天性の魔性と呼びたくなる。
そんな彼女はゴルゴへの依頼にあたり、流れるように彼にも体を開こうとするのだが、我らがゴルゴは「そういうボーナスを受け取るほど、俺に自信はない……」とまさかの据え膳スルー。彼女のニコラスへの想いをこの時点で見抜いていたのかもしれない。
十分な予算を与えられない技術者の悩み
後の『ホワイトハッカー』では、日本における情報セキュリティ技術者への無理解や冷遇が取り上げられているが、どうもそれは我が国だけの恥ではないらしい。本話の主役級のニコラスもまた、想定外のサイバー攻撃を防げなかったことを経営者に詰められ、最後は「限られた予算と人材で、やりうる限りのことはやった!」とヤケのように言い返している。
サイバー戦といえども結局は人海戦術の一面があり、相応の人件費なくして万全の防御はできないというのはどこの国でも同じようだ。世界規模のセキュリティ意識の低さに警鐘を鳴らすエピソードといえる。
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東郷 嘉博
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