この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。アルメニア系米国人で犯罪組織のボス、ラーガシアンは放浪していた日本人の元力士・カズラを用心棒として雇い入れる。ラーガシアンが日本人を優遇するのにはある理由があった…。オスマン帝国末期の1915年に起きたアルメニア人大量殺害事件を背景とした人間ドラマ。
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アルメニア人虐殺の認否
本作の依頼人はDEA(アメリカ麻薬取締局)ながら、海上にある石油採掘場のヘリパッドでターゲットを狙撃して欲しいとの条件にはアメリカのトップ、つまり大統領の意向が働いている。さらに、その大統領(現実ではバイデン大統領)が約100年前に起きたアルメニア人の虐殺を認めたことも絡んで、作中では二重、三重の逆転現象が起きている。
「アルメニアってどこ?」と思う日本人は多いかもしれないが、トルコの東側にあり、ソビエト崩壊に伴い1991年に独立したアルメニア共和国の存在は欧米にとって大きく、虐殺を認める向きが多い。
アルメニアワイン
アルメニアには世界最古とされる約6000年前のワイン醸造所の遺跡がある。中世以降はイタリアやフランスが生産地として有名だが、ワイン発祥の地としてはアルメニアを含めた黒海とカスピ海に挟まれた地が有名だ。
ソビエト時代、ブランデー製造に注力させられたことでワイン生産は衰退したものの、ソビエト崩壊後に新たなワイナリーが多数誕生しており、日本でも入手しやすくなっている。ターゲットである麻薬組織のボス、ラーガシアンもアルメニア人だけあってアルメニアワインを愛飲していた。アルメニアの歴史を感じつつ飲んでみてはどうだろうか。
ゴルゴの相撲スキル
様々な格闘技に精通しているらしき描写のあるゴルゴ。『13カウント』ではボクシングの世界チャンピオンと、『チャイナ・タウン』では太極拳の達人とほぼ互角に渡り合っている。本作でゴルゴの相手となるのは日本人、それも相撲取り出身のカズラだ。
もっともカズラは相撲部屋の入門初日に兄弟子を殺しかけて破門となっており、相撲の技に習熟しているとは考えにくい。ただし高校や大学の相撲部で経験を積んでいた可能性はありそうだ。そんなカズラのぶちかましを正面から受け止めたゴルゴ。さらに逆転の技であるうっちゃりを決めたのは見事の一言。
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2024年9月現在、単行本化はされていません。単行本化までしばらくお待ちください。
研 修治
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