この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス未収録作品。地球温暖化対策に関する投資セミナーを開き、主婦たちを誘い込むフラレスタ財団。代表の落合は軽妙なトークで客を魅了するが、彼の過去と背後にはきな臭い陰謀が蠢いており…。自身の欲望に振り回される人々の悲哀を描く長編ドラマ。
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モデルとなった寺はある?
『刃の裁き』以来で日本が舞台となった本作。過去には銃の入手が困難だった日本ながら、今回のゴルゴはしっかりM16を使っている。日本の治安は緩んでいそうだ。舞台となったのは、詐欺がはびこり虚飾にまみれた東京と、過疎が進み寺でさえ廃れかかった新潟の山村。
登場する古寺である善幸院のモデルを探したところ、一字違いで新潟県には善地院、大分県には善幸寺があった。さらに福井県には漢字をひっくり返した幸善院なる寺院が存在したが、丸っと同じ名前の寺は無さそうだ。もっとも詐欺師が身を隠す寺のモデルになるのは困るだろう。
世の中にはびこる詐欺
詐欺の被害者となった主婦は、温暖化対策を名目とした架空投資に引っかかると同時に、知り合いから誘われたのがきっかけでホストの沼にもはまっている。投資詐欺もホストの接客も、お金と引き換えにひと時の夢を見させる意味で大差ないと言えそうだ。
そんな架空投資の元締めである詐欺師の柴田は、日本における出生率の低さから先細りが確実として、日本の年金を「ヤバイだろ」「破綻は見えている」と言い切っている。大元の国が小手先の延命策を繰り返している年金が存在する以上、日本から大なり小なりの詐欺が消えることはなさそうだ。
1つの依頼と1つの予約
本作でゴルゴは2つの依頼をこなしている。それ自体は少ないものの過去にもあるが、珍しいのは2つ目の依頼が不確定な将来の予約であったこと。『未来への遺産』でゴルゴは、「(その時に)俺が生きているという保証はない」と断った。しかし『神の滴』や『“E”工作』では、将来における一定の条件下で生じる予約を引き受けている。
「復讐か?」と尋ねたゴルゴに、詐欺師の柴田は「筋を通したい」と答えた。『未来への遺産』の依頼人が自らのビジネスを否定するような醜態とは異なる柴田の意思に、ゴルゴは何か感じるものがあったと思いたい。
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2024年9月現在、単行本化はされていません。単行本化までしばらくお待ちください。
研 修治
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