この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第116巻収録。大戦中、米国に張り巡らされた日本の諜報組織があった。その名を「“E”工作」。リーダーのオストスは、日本人外交官を父に持つヘンダーソンとともに米国の原爆製造計画の全貌を入手。その情報を日本政府に渡したものの、ある人物によって握りつぶされてしまう。そして戦後50年、オストスはある決意をもってヘンダーソンの父・剣持を訪ねるが……。
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第二次世界大戦におけるスパイ活動
「日本は情報戦に弱い」との考え方がある。確かに情報戦で後手後手に回ることの多い日本だが、全く無策だったわけでもない。第二次世界大戦における“東機関(とうきかん)”が1つの例だ。
NHKのドキュメンタリー番組「私は日本のスパイだった~秘密諜報員ベラスコ」で有名になった東機関をモデルにしたのが、本作に登場するE工作だ。そのE工作のトップだったミゲル・オストスに東西新聞社の社会部に所属するヨシダ記者が接触したことから話が動いていく。その後、ミゲルに殺されたらしいヨシダ。究極のメニュー作りでも手伝っていれば良かったのだが。
元外務大臣にモデルはいるか
今回のターゲットは日本人の剣持十郎。第二次世界大戦時はスペイン公使としてE工作に関わり、アメリカ人女性との間に子を成している。戦後は政治家となり、外務大臣など閣僚経験も豊富な人物。そしてスパイ達が入手したアメリカの原爆計画を握りつぶした張本人でもある。
個別に該当しそうな事柄はあるものの、ひと通りピッタリの人物は見当たらない。今作と同じように戦中の逸話を扱った『闇の封印』では故・田中角栄にそっくりの中田丸助や、故・福田赳夫に瓜二つの幸田武吉が登場するが、剣持十郎は複数の人物をつぎはぎした架空の人間なのだろう。
大文字焼きを背景に狙撃
ゴルゴが狙撃するシーンの背景には、毎夏に京都で行われる五山送り火の1つ「大」の文字が浮かび上がる。日本を舞台とした作品では東京が登場することが多めながら、本作や『一射一生』のように京都がじっくり描かれることもある。鴨川に設けられた川床でミゲルと剣持が過去の出来事や隠された事実を語り合う。
そして別れ際のミゲルが剣持の暗殺に失敗した瞬間、ゴルゴの弾丸が剣持のこめかみを貫いている。依頼人の願いを寸分の狂いもなく成し遂げたゴルゴ。この後“捨てガネ”にならなかった報酬で京の夜を楽しんだのだろうか。
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研 修治
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