この記事の目次
簡単なあらすじ
SPコミックス第155巻収録。冷戦時代の遺物となっていた軍事攻撃衛星がシステム障害により暴走をはじめた。周囲への無差別攻撃が都市にまで及ぶことを恐れたCIAは、衛星の破壊をゴルゴに依頼する。ゴルゴは宇宙へ旅立つのに先立ち、夜間の暗視狙撃に特化した日本の弓術「鞍馬竹林流」に弟子入りし、その奥義を吸収するが……。脚本:簗島寛
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暗殺弓道・鞍馬竹林流
学校体育で取り入れられている柔道や剣道とは違い、弓道経験者は少ないのではないだろうか。ましてや正統派ではなく、暗殺に主眼を置いた裏弓道ともなればなおさらだ。そんな鞍馬竹林流の技を継承しているのが弥生といううら若き女性だから驚きだ。
この弥生、楚々としていながらも凛とした強い大和なでしこで、日本男児なら嫌いな人はいないだろう。女性の目から見ても憧れるのではないか。『史上初の狙撃者』に登場する六条由香も古武道砲術の心得があり、弥生と通じるものがある。ただし由香はかなりの肉食系女子として描かれており、読者によって好みは分かれるところだ。

宇宙空間での仕事
冒頭、航空機が謎の飛翔物で爆発事故を起こして以降、ゴルゴが唐突に京都で弓道を習う様子が描かれるだけである。弓道を習うシーンや丁夜通の儀にゴルゴが挑むシーンは見ものだが、何のための弓道修行なのかが全く説明されない。
もどかしいストーリー展開であるが、後半に一転、宇宙空間での狙撃依頼が待っていた。地球上のあらゆるところで仕事をしてきたゴルゴだが、宇宙空間での仕事は『軌道上狙撃』に次いで二度目である。後に『流星雨の彼方で』でも宇宙空間での仕事を引き受けているので一読されたい。
戦略防衛構想SDI
1980年代、巷間をにぎわした”戦略防衛構想(SDI)”だが、若い読者は知るまい。簡単に補足しておこう。”SDI”とは作中のレーブン大統領ならぬレーガン大統領が主導した冷戦時代の戦略防衛構想で、宇宙空間の静止衛星からレーザーでソ連の核ミサイルを迎撃するという別名スターウォーズ構想。むしろスターウォーズから着想を得たとしか思えないファンタジーなシロモノである。言うまでもなくコスト効率が悪く冷戦終結とともに消滅していった。口の悪い日本の政治家からは
「S……そんなものに」
「D……だまされたら」
「I……いかん」
と揶揄されていたことが思い出される。

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片山 恵右

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