この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第14巻収録。粂八が評判の料理屋・万亀に客を送った際、昔の盗賊仲間・馴馬の三蔵を目撃する。三蔵は万亀の主人・万吉の命を狙うが仕損じる。過去に万吉は、粂八にも関係する”ある事件”が関わっていたのだった……。粂八の過去も興味深く描かれる力作エピソード。
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盗人だった粂八の過去とは?
平蔵の密偵として働く小房の粂八。連載第一話となる『鬼平犯科帳』では野槌の弥平の一味として捕まり、拷問を受けるまでになっている。
太ももの上に石を乗せられたにとどまらず、足の甲に釘を打たれてロウを垂らされるのはさぞ痛いだろうな、と。その後『血頭の丹兵衛』で密偵になることを志願し、数々の手柄をあげている。
もはや平蔵だけでなく火付盗賊改方になくてはならない存在だ。木村忠吾よりも役に立つんじゃないかと言っても、鬼平ファンなら納得してくれるだろう。そんな粂八が中心となって別の過去が語られるのが本作だ。
粂八がドッキリした瞬間
『暗剣白梅香』で船宿“鶴や”の留守を預かった平蔵は、船宿を粂八に任せている。『狗』で偶然訪れた野川の弥一を巧みに追い込んだように如才なく勤める粂八。過去の苦労が生きていそうだ。
と言って根っから宿屋の親父になったわけでもなく、本作では粂八に声をかけてきた男達を、「使用人の格好をしているが、料亭で雇っている用心棒だな」と見ぬいている。
その直後に平蔵と出くわして、「いらずらでも見つけられた子供のように」うろたえてしまったのは、粂八らしからぬうかつさだ。ただし、そのうかつがあったことで粂八は殺されずにすんだ面もある。
過去をめぐる男と男のやりとり
タイトルとなっている馴馬の三蔵は粂八の昔なじみの盗賊だ。二人と彼らの女達との関わりは本作を読んで欲しいが、かたき討ちで負った傷が元になり馴馬の三蔵は粂八の腕の中で亡くなってしまう。
その情景は、『老盗の夢』で亡くなった蓑火の喜之助を思わせるものがある。二人とも血を見ることを嫌った盗賊で、粂八にとっては恩人とも言うべき人達だった。
13年ぶりの男泣きをした粂八の心情はどれほどのものだっただろうか。
そんな粂八の過去を、「だがな、それを口に出しては、味ない味ない」とやり過ごす平蔵もまた男だなと思わせる。
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研 修治
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