この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第25巻収録。平蔵の友人で五百石の旗本・宮口伊織が、掏摸に財布を掏り取られた。現場を目撃した平蔵は掏摸師を捕縛する。宮口の財布から出てきたのは、どこかの錠前の型をとった練香だった……。
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とんだ旗本の不祥事
遊び人で金遣いが荒く、しかも性根まで腐った旗本、宮口伊織。誰に迷惑をかけるでもなく女遊びに興じている程度ならば、鬼平も何とも思わなかっただろう。しかしひょんな事から宮口伊織と盗賊との結びつきが見えてきたのだ。
流石に火盗改メ長官としては見過ごすわけにはいかなかった。立場に胡坐をかいて、自らを律する事が出来なかった旗本の行く末を克明に描いた作品だ。現代を生きる我々にとっても、きっと大切なメッセージを伝えてくれるだろう。
高貴な香りを楽しむ道
本作では練香を用いて鍵型を取られていた事から盗賊との繋がりが見えてきた訳だ。線香や焼香などで知られる香は、日本で古くから残されているイメージがあるだろうか。しかし紀元前3000年以上前からエジプトなどの地域でも使われていたというのだ。主に植物の香りを楽しでいたのだが、どうやら防虫や防腐といった薬としての利用もされていたようだな。
様々な植物を試して行ったのだろう。世界中のあらゆる場所で香の文化が伝わっていて、香木と評される木材は特に非常に高い価値があるのだ。日本では“蘭奢待”の名で正倉院に収納されている国宝も伽羅という香木だ。伽羅の木はブロック程度でも数百万円~数千万円で取引される。蘭奢待ほどの大きさになると、さて幾らになるのだろうかな。
宮口家と長谷川家の違い
宮口家五百石、長谷川家四百石の違いはあれど、直参旗本の身分に違いはない。若いころから遊び呆けて、それは悪い事もしてきただろう。長谷川平蔵は火盗改メ長官として辣腕を奮い、片や宮口伊織は無残な末路を歩んでしまった。
この両名に何の違いがあったのだろうか。やはり平蔵には剣術があり、そこで培った心があった。更に頼れる仲間たちにも恵まれたことは、やはり根底に剣術という教育があったからに他ならないだろう。何かに没頭して努力をした事は、どのような形であれ必ず将来に繋がるのだな。
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滝田 莞爾

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