この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第23巻収録。彦十が、第二十巻『妙義の団右衛門』で殉職した馬蕗の利平治の弟子・仁三郎と再会する。仁三郎は利平治を探しながら嘗役としての腕を磨いているという。その仁三郎が持つ、ハイレベルな嘗帳を狙って盗賊・沼目の太四郎一味が暗躍する……。密偵・仁三郎の初登場エピソード。
スポンサーリンク
被害者に対する心づかい
亀戸にある料理屋を訪れた平蔵。かつて『妖盗葵小僧』ではずかしめを受けた女性をおもんぱかっての行動ながら、こうした心づかいが平蔵の人徳につながり、事件解決に結びついているのは言うまでもない。もっとも、これがきっかけで別の事件に遭遇する皮肉な面があり、後々に需要な役どころとなる人物をさりげなく描いているのも面白い。
そんな人物を“職人風の男”と思い出す平蔵の観察力には舌を巻くいてしまうが、さらに料理屋の女中から話を聞いた平蔵が、「商家の中にまで入って、仕事をな」と目の奥を光らせる場面はぞっとしてしまうほどだ。
平蔵と原作者の食い道楽
料理屋を訪れた平蔵は鯉の皮と素麺の酢の物を出され、「何とも言えぬ味わいだ」と堪能している。その後は鯉の洗いに加えて、「お殿様の好物」な雄の鯉の肝の煮つけまで出てくるとのこと。
原作者である故・池波正太郎さんは食通としても有名で『散歩のとき何か食べたくなって』など食べもののエッセイも発表している。鬼平シリーズでも食べ物の描写は多く作り方も書かれているが、それらの実現は可能だろうか。『明神の次郎吉』などでは五鉄の軍鶏鍋、『泥鰌の和助始末』ではウナギのかば焼きが登場する。よだれが落ちないように注意したい。
盗賊から密偵として大活躍
本作で障子や提灯などの張り替え屋として登場した仁三郎。女に騙されたことを平蔵から教えられたこともあり、盗賊の下調べをする嘗役(なめやく)から足を洗い平蔵の密偵となることを決意する。その後の仁三郎は『蛙の長助』で密偵としての初仕事を任せられるようになり、冷や汗をかきつつ役目を果たしている。
さらに後に『見張りの見張り』ではいっぱしの密偵として大滝の五郎蔵の危機すら救う活躍を見せている。本作で、殺されてしまった馬蕗の利平治を思いつつ仁三郎を、「大事に使ってやらねば」と思う平蔵。今後の仁三郎の活躍が楽しみだ。
この作品が読める書籍はこちら
研 修治
最新記事 by 研 修治 (全て見る)
- ゴルゴ13:第645話『破綻の先に』のみどころ - 2025年1月14日
- ゴルゴ13:第644話『心を撃て!』のみどころ - 2024年11月28日
- ゴルゴ13:第643話『怪力戦士イヴァノバ』のみどころ - 2024年11月11日