この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第20巻収録。盗賊界の大物・妙義の團右衛門とばったり再会した利平治。利平治が密偵になったことを知らない團右衛門は、利平治に助っ人を要請。團右衛門に義理がある利平治は、平蔵に“売る”かどうかで苦悩する……。利平治はこの回で殉職し、平蔵の怒りの追跡がはじまる。
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一筋縄にいかぬ大盗賊
盗賊界で非常に広い顔を持つ馬蕗の利平治、本作においても市中で大盗賊を発見する大手柄だ。自らの嘗帳に報酬を与え、面倒を見てくれていた妙義の団右衛門。利平治から嘗帳を買い、更に利平治も信頼をしている間柄からも、団右衛門が本格の大盗である事が推測できる。
密偵としては、古い馴染みであっても火盗改メに売らねばならぬのが宿命だ。その葛藤に苦しむ利平治だったが、やはり密偵としての責務を貫いたぞ。鬼平に苦しみを打ち明けた利平治は、更に衝撃的な事柄を鬼平に伝える。火盗改メの役宅には、既に団右衛門の手下が入り込んでいるという内容だった。大胆不敵な強敵、妙義の団右衛門との戦いを描いた大作だ。
強敵の優れた嗅覚
役宅に潜入している飯炊き男の竹造は、つまり盗賊が火盗改メに送り込んだ引き込み役という事だ。忠吾、細川、お調子者二人も、いつもの軽い気持ちで竹造をからかったのだろう。しかし何気ない日常のその一点から、全てのほつれが始まったと言える。
いつものように盗賊たちは何も知らずに、すっかり火盗改メの手のひらの上で躍っていた……という驕った気持ちが最悪の結末を導いてしまった。慣れという油断こそが大敵だったのだ。
最悪の結末
悔しいが、妙義の団右衛門は鬼平たちの策略の一枚上手だった。密偵としての恩義を強く感じすぎたが故の暴走。そして鬼平も利平治も、プロ意識が高すぎるために失敗をしてしまったのかもしれない。しかしその代償はあまりにも大きすぎた。
『熱海みやげの宝物』から始まった馬蕗の利平治の活躍は本作で幕を閉じる。しかし利平治の弟子で、同じく嘗役の仁三郎が『蛇苺』で登場する事になるぞ。密偵として非常に重要な役割を担う事になる、仁三郎へと繋がるストーリーだったのだ。
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滝田 莞爾
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