この記事の目次
簡単なあらすじ
ワイド版第6巻収録。京を引き上げ、一路、江戸を目指す平蔵と左馬之助、忠吾。しかし盗賊・空骨の六兵衛が平蔵の首に千両の賞金をかけたため、場所を問わず刺客に襲われる。そんななか投宿先で幼馴染の鎌太郎と再会した左馬之助。じつは鎌太郎の目的は平蔵を殺害し、賞金を手に入れることだった……。
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左馬之助の単独行動が悲劇に
表題の“駿州(すんしゅう)”とは駿河(するが)のことで、現在の静岡県の中部地方となる。東海道の一角で江戸幕府を築いた徳川家康の出身地でもあることから重要視された場所の1つで、幕府の直轄領や徳川の一門、重臣などが割り当てられることが多い。
本作では『盗法秘伝』でしばしの休暇を与えられた平蔵が京都で羽を伸ばした帰り道に起こった事件を描いている。旅に同行した岸井左馬之助が亡き父親の言葉を思い出して秋葉神社や秋葉寺(ともに現存)に単独で向かうのだが、これが終盤の悲劇につながるのは皮肉と言えるだろう。
南町と北町奉行の内輪もめ
鬼平のいない江戸では悲惨な強盗が頻発する。札差(武士への支給米を換金する商売)に押し込んだ火付六兵衛は家人を皆殺しにした上、2000両を奪う。
現代の金銭価値に直すと少なくとも5000万円、多く見積もれば2億円にもなる大金だ。そんな悲惨な事件の翌朝、最初に着いた北町奉行と続いて到着した南町奉行のいさかいが起こる。
これは月ごとに交替して奉行を勤めているためで、互いに未解決事件をあげつらって非難する様は見苦しいの一言。その後に幕府首脳の口から火付盗賊の件数が急増したことが語られているが、こんな奉行らでは当然か。
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「坊ちゃま」と呼ぶ相手
平蔵達と別行動をとった左馬之助は龍山宿の宿屋で郷里の幼なじみと偶然出会うのだが、そこで左馬之助が下総国の印旛(現在の千葉県北部や茨城県南部あたり)出身の郷士(農業も兼務していた下級武士)であることが分かる。
『本所・桜屋敷』では平蔵の、『血頭の丹兵衛』では粂八の幼少期が描かれているのだが、彼らがあまり恵まれなかった少年期を過ごした一方、左馬之助は比較的実直に育ったようだ。
それだけに「坊ちゃま」と呼んだ幼なじみを切ってしまった左馬之助の、「俺はこ、こいつを、死なせたくなかったよ~っ」の言葉が痛々しい。
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研 修治
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